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アライグマが地球を汚す
■待った無しの地球温暖化対策 地球温暖化の進行は、どうやら疑う余地がないほど深刻な状態になりつつあります。京都議定書は、気候変動枠組条約に基づき、1997年12月11日に京都市の国立京都国際会館で開かれた地球温暖化防止京都会議(第3回気候変動枠組条約締約国会議、COP3)での議決した議定書です。この議定書の中で、日本は、2008年から2012年の間に、1990年に比べて温室効果ガスを6%削減するという削減目標を掲げています。 温室効果ガスの大部分を占める二酸化炭素の多くはエネルギーを起源としています。つまり、電気やガス、ガソリンなどが主な排出源です。では、日本の削減目標は、どれくらい達成されているのでしょうか?
この表を見ると、工場や発電所などは、効率化、省エネなどの努力で、一定の成果は上がっていますが、削減どころか、大きく温暖化に貢献しているのが、業務(デパート、コンビニ、サービス業など)と、家庭です。自家用車は運輸部門に入るので、家庭からの温室効果ガスが激増していると考えられます。 1990年以降、日本は、温室ガス削減にずいぶん努力してきました。 ・エアコン、冷蔵庫には特定フロンが使われなくなり、省エネ効率も10年前とは比べものにならない高性能なものが販売されています。 ・洗濯機も大型化し、効率的にまとめ洗いができるようになりました。節水性能も格段に進歩しています。 ・自動車も燃費のよいエンジンの開発、ハイブリッドカーの普及、省エネカーの普及への優遇税制など、ずいエネルギー効率が改善しています。 ・住宅でも、外断熱工法による省エネ住宅、オール電化、オールガス化、ソーラー発電、など、一昔前の住宅に比べて格段に省エネが進んでいます。 ・ それでは、なぜ、これほどの温室効果ガス削減の努力がされているので、目標が達成できないのでしょう? (1)エアコン自体は省エネになったが、値段が安くなったので、家庭に1台から、一部屋に1台と、複数台数を持つ家庭が増えた。また、快適さを優先して、職場のように設定温度も守られていない。 (2)プラズマテレビ、液晶テレビ等、テレビの大型化が進み、消費電力がアップしている。衛星放送、地上波デジタル、有線放送など、番組の多様化により、テレビを付けている時間が増えている。 (3)洗濯機は大型化したが、まとめ洗をせずに、洗濯回数が増えている。 (4)自動車は低燃費になったが、複数台の自動車を所有する家庭が増えた。電車通勤できるのに、便利だからという理由で車通勤する人が増えている。 (5)住宅も便利になった分、いつでもお湯を使う、一日中エアコンを付けっぱなし、冬でも半袖。 地球温暖化は自分には関係ない、国が何とかしてくれる、企業が努力すればよい・・・なんて考えていませんか? 地球温暖化を進めているのは、私たちの生活が主原因であり、特に便利さ、快適さを求めるライフスタイルが温暖化を加速することを再認識する必要があります。 ■アライグマが地球を汚す アライグマといっても、ここでは動物のアライグマのことではありません。石けん系の掲示板によく登場する、過度の清潔志向を持ち、1日中洗濯していても飽きない、洗濯が趣味のような人のことをさします。このアライグマが、どれくらい地球温暖化に貢献しているかを考えてみましょう。 まず、アライグマの特長です (1) 清潔第一。洗濯は毎日2回以上、洗濯機をのぞいて汚れが落ちていることに至福の喜びを感じる。 (2) 石けんは環境に優しいと信じ込んでいる。石けんさえ使えば環境問題は起こらない。 (3) 抗菌グッズが好き。歯ブラシ、洗面器、石けん置き、洗面台、ブラシなど、抗菌剤配合製品には目がない。 (4) 石けん販売店を無条件に信じて疑わない。石けんを扱っているから、環境によい、健康によい店だと信じ込んでいる。 (5) 合成洗剤は悪、石けんだけが正しい。 (6) 合成化学物質はすべて危険、天然物ならすべて安全。 (7) 石けんの過剰使用に罪悪感も、疑いも持たない。石けんならいくら使っても安心。 (8) 情報源は石けん系掲示板。石けん系掲示板の発言は無条件に信じる。 (9) 几帳面な反面、面倒くさがり。全自動ドラム式洗濯乾燥機が好き。 さて、アライグマの何が問題かを一つ一つ検証していきます (1) 1日に2回以上洗濯機を回す 石けん洗剤工業会が、定期的に約300人の人を対象に、洗濯についてアンケート調査を行っています。その結果から、@一人暮らしの働く女性は、週に1〜2回洗濯する人が多い、A主婦は毎日洗濯する人が多い(50〜70%)、B主婦の洗濯回数は1日に1.2〜1.9回。これらの結果から、平均すると、主婦は、1日1回強洗濯をしているという実態が浮かび上がってきます。また、使っている洗濯機も大型化しており、現在では7kg〜8kg洗いが主流のようです。 まとめると、主婦の洗濯実態は平均すると
*2: 合成洗剤:アタック、石けん:炭酸塩30%入り粉石けん *3: 東京都水道局 これは、あくまで平均ですが、この数字(1日1回以上、1週間で7回以上)を大きく上回っている場合は、洗濯のしすぎ。電気、水を作るのに、温暖化ガスが発生します。排水は水を汚します。 (2) 石けんの過剰使用に罪悪感がない 「石けんが泡立たない時は、標準使用量の2倍、3倍使ってみなさい」、このようなアドバイスをする人がいます。そして、それを信じて、何の疑いもなく石けんを過剰使用する人がいます。 一部の石けんメーカや石けん販売店は、「石けんは1日で分解するので環境を汚さない」などと、いかにも石けんが環境によいという宣伝をしています。確かに、石けんは合成洗剤に比べて生分解性はよいのですが、これはあくまで「同じ量」使った場合です。石けんの標準使用量は水30リットルに対して40g、そのうち有機物(石けん分)は28gです。一方、コンパクト洗剤の標準使用量は水30リットルに対して20g、そのうち有機物は5gです。つまり、1回の洗濯で石けんは、合成洗剤の5倍以上の有機物を排水として流します。石けんを標準使用量の2倍使っている人は、合成洗剤の10倍以上も有機物を排水として出す計算になります。いくら、石けんが生分解性が良いと言っても、毎日毎日10倍の有機物を流すと、どちらが環境負荷が大きいのでしょうか? 石けんにまつわるニセ科学(1) も参考にしてください また、石けんの使いすぎは排水の問題だけではありません。石けんは、牛脂、菜種油、ヤシ油、パーム油などが原料ですが、その多くは輸入に頼っています。油脂の生産には、現地で水、肥料、農業機械等が必要で、当然エネルギーが必要です。油脂を輸入するのに運送にもエネルギーが必要です。油脂を加工して、石けんを製造するにもエネルギーが必要です。パーム油は合成洗剤、石けんの両方の原料ですが、同じパーム油から作られる石けんを合成洗剤の10倍量も使ったら、生産、輸送エネルギーも10倍必要、すなわち10倍温暖化を加速させることになります。 石けんの過剰使用には十分注意しないと、環境によいつもりで使っている石けんが、合成洗剤以上に環境を汚すことになります。石けんを標準使用量の2倍も3倍も使っている人は、その原因をよく考えてみてください。多くの場合は、石けんの選び方が悪い、ちちんとはかっていない、ちゃんと溶かしていないなどが原因です。正しい石けん洗濯のやり方 も参考にしてください。 (3) アルカリ洗濯を併用すれば解決する? 「1回の洗濯に十分量の石けんを使い、その他の場合はアルカリで洗えばトータルで環境負荷を抑えることができる」・・・なるほどもっともな理屈です。 しかし、本当に、そんなことが可能なのでしょうか? アルカリ洗濯は、基本的に汚れの少ないもの、ほとんど汚れていないもの、汚れが見えないものなどの洗濯に使う方法とされています。そもそも、そんな汚れてもいないものを、汚れ物と分けて、洗濯回数を増やすこと自体が問題になります。汚れ物をためて、まとめ洗いがもっとも効率がよい洗濯方法であることは疑う余地がありません。 「汚れたら洗うから、着たら洗う」、このような過剰な清潔志向が、無駄な水、電気、石けんを使い、地球温暖化に手を貸すことになります。 いや、アルカリ洗濯が効果があるという方は、上の平均石けん使用量、平均水道使用量と比較 してみてください。もし、これを下回っているなら、すばらしいエコロジーを実践されています。 (4) 石けんをブランド化している 石けんは、お米や野菜と同じ、生活用品です。普通の生活の中で、スーパーや薬局、生協などで買えばよいものです。毎日の洗濯に使う粉石けんなら、少し探せば、簡単に手に入ります。お米や野菜を毎回通販で買う人はいません。どうしても入手が難しい場合は別ですが、通販で粉石けんを買うと、その1個のために運送エネルギーがかかり、これまた温暖化につながります。環境に優しい石けんだからこそ、環境に優しい入手方法で買いたいものです。 (5) わざわざお湯を沸かして洗濯する 石けんは、合成洗剤に比べて冷水に溶けにくいのは事実です。でも、溶かしさえすれば冷水でも問題なく使うことができます。石けん洗濯がうまくいかない原因の大部分は、この溶かし方にあります。 粉石けんを確実に溶かす工夫、 水温の低い水での洗濯、粉石けんの選び方 も参考にしてください。 冬場でも、お風呂の残り湯を使えば、粉石けんをうまく溶かすことができます。節水にも役立つのでぜひ利用してください。 もし、残り湯が使えなくても、わざわざ洗濯のためにお湯を使わないでください。お湯を沸かすことで、ガス、電気を使い、温室効果ガスを大量に発生させてしまいます。「お湯を使うのは、石けんを使うための必要経費」なんて馬鹿なことを言う人もいますが、このような行為が確実に環境を汚します。 (5) 温暖化対策は、消費者一人一人の意識と工夫にかかっている 今回は、間違った洗濯行為が地球温暖化につながることを例にあげましたが、これ以外にも、生活スタイルのちょっとした工夫で、温室効果ガスを大きく減らすことができます。地球温暖化は、私たち一人一人の意識と、行動に大きくかかっています。自分たちの子供たちのためにも少しずつでも実践していきたいと思います。 EICネットや環の暮らしのHPに具体的な方法が書かれていますので、ぜひご覧ください。 |
参考となるHP
2005年度温室効果ガス排出量(速報),環境省
お洗濯という家事、その実態は,石鹸洗剤工業会
もっと知りたい「水道」のこと,東京都水道局
地球温暖化に対する取り組み、EICネット
環のくらし