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消臭スプレーには注意 −清潔志向もほどほどに−


 最近は清潔志向の高まりから、臭いを過度に気にする人が多くなっています。そんな中、「消臭スプレー」が売り上げを伸ばしているようです。でも、消臭スプレーって本当に効果があるのでしょうか? そして、消臭スプレーに含まれている化学物質を、毎日吸っても大丈夫でしょうか?

 トイレのにおいの正体は、うんちのにおいの元である、硫化水素、メルカプタン類、インドール、スカトールやアミン、そして、おしっこが分解してできるアンモニアが混ざったものです。トイレの消臭剤は昔から多くの製品が市販されていますが、においをとる仕組みは、

 (1)においを吸収・吸着する
 (2)においその物を分解する
 (3)別のにおい(芳香剤)で悪臭を感じにくくする

といったものが多いようです。昔から、トイレにはパラジクロロベンゼンという芳香剤のボールが使われていましたが、最近では、清潔志向の高まりで、トイレ用の消臭剤も種類が増えてきました。消臭成分も多種多様になり、両性界面活性剤系、不飽和脂肪酸系は多く使われていますが、自然志向の高まる中、緑茶フラボノイド、グレープフルーツシード、孟宗竹エキスなどの植物抽出成分も使われるようになりました。製品自体も高機能化して、においの吸着成分と芳香成分を別々にゲル化して、複合的に消臭するものなどハイテク化しています。

 このような消臭剤の種類が増える中、最近、特に売り上げが伸びているのが、短時間で集中的に効果があるスプレータイプの製品です。これはエアゾールタイプや手動のポンプタイプで、成分を霧状にして、使用前、あるいは使用後のトイレのにおいをすばやく消すことができます。このタイプの消臭剤の効果や室内環境への影響について、国民生活センターが商品テストを行っています。消臭効果は、悪臭成分がどれだけ減少したかを機械を使って調べる方法と、人間が直接においをかいで評価する方法が用いられました。その結果、悪臭成分の減少率と感覚的なにおいの残留とは相関が無く、製品の香りが強いものほど、悪臭を感じなくなる傾向がありました。無香料のものは、効果を感じるために、使用量が増えてしまうようです。

 このように、効果があるスプレータイプの消臭剤には,消臭成分を吸って安全なのかどうかという疑問がわいてきます。厚生労働省は「室内空気の状態の目安」として総揮発性有機化合物(TVOC)の暫定目標値を400μg/m3としていますが、国民生活センターがテストした15銘柄の製品のうち13銘柄がこの目標値を超えていました(6畳の部屋での結果ですが、狭いトイレでは同等かそれ以上の濃度になると考えられます)。また、エアゾールタイプは、消臭剤を噴霧したときの粒子径が小さく、肺から体内にはいる可能性が高いとも指摘しています。

 最近シックハウス症候群や化学物質過敏症など室内空気汚染物質によると思われる疾患が増加していることも考えると、アレルギーが気になる人は、スプレータイプの製品は控えめにして、換気に気を付ける、悪臭も吸ってくれて見た目にもリラックスできる観葉植物を置く、安全な芳香剤を使うなどの方法も取り入れてみてはどうでしょうか。

参考: 国民生活センター 


東京書籍「うんちとおしっこの100不思議」から一部引用しました