Home/ |
硬度の高い水での洗濯
■硬度と洗浄力 硬度の高い水を使って洗濯すると、使った石けんの多くは石けんカスになってしまい、十分な洗浄力が得られなかったり、すすぎの時に大量の石けんカスが発生します。 硬度の高い水を使うときは、石けんの量を多くするとか、炭酸塩を入れるとかの対策を奨める人もいますが、じゃあ、自分の使っている水の硬度に対して、どれくらい石けんを使ったらいいかは、よく分かりません。 このページでは、硬度と洗浄力の関係を勉強したいと思います。また、硬度の高い水を使って洗濯する場合の、最適石けん使用量についても考えたいと思います。 ■起泡力試験 石けんの泡が立たないと洗浄力はありません。泡立ちは洗浄力の目安になります。それでは、硬度によって、石けんの泡立ちはどのように変化するのでしょうか? 硬度ゼロの軟水、水道水(硬度60)、そして硬度150の水を使って、石けんの濃度と泡立ちの関係を調べてみました。 実験は、それぞれの水を使って、石けんを所定の濃度に溶かして、その2mlを試験管に入れ、30秒振り混ぜた後、1分間静置した後、泡の高さを測りました。使った石けんは、シャボン玉スノール(99%純石けんです)。水温は15度でした。
写真、グラフから、軟水は石けんの濃度が低くても泡立ちが良いことが分かります。石けんの場合は、泡立ちと洗浄力は、ほぼ比例することから考え、泡の高さが25mmで実用的な洗浄力が得られるとすると、それぞれの水で、最適の石けん使用量は次のようになります。
軟水を使うと、石けん使用量は2〜4割減らせると言われていますが、この実験からも、石けん使用量は4割以上減らせることが分かりました。 硬度が150という硬水でも、石けん使用量は意外に少なく、1.3倍程度で良さそうです。硬度が高いと、石けんの泡立ちが悪いので、石けんを大量に使ってしまいがちになりますが、このグラフからも、石けん使用量を増やしても、泡立ち(洗浄力は)あまり変わりません。石けんの使い過ぎは、すすぎの時に大量の石けんカスが発生し、洗濯物に残留することになるので、使い過ぎには注意してください。 それでは、逆に、石けん使用量はどこまで減らせるのでしょうか? グラフから分かるように、石けんは、標準使用量以下では、急激に起泡力(洗浄力)がなくなります。「予洗いをしたから、石けん使用量を半分に減らす」、というのは大間違いで、洗浄力はがた落ちになります。 石けんは、合成洗剤と違って、使用量はきわめて正確に計る必要があります。最適使用量は、主に水の硬度によって決まるので、使っている水の硬度を調べて、上の表を参考にして、使用量を決めて、正しく量ってください。 ■硬度対策1、炭酸塩入りの石けんを使う よく言われている、硬度対策は、炭酸塩入りの石けんを使うことです。炭酸塩は、水をアルカリにして、石けんの洗浄力を高める、硬度成分と反応して、硬水を軟化する、等と言われているので、その効果を確かめてみました。 上と同じ実験を、炭酸塩入りの粉石けんで行いました。使った石けんは、グリーンコープ(ボーソー油脂製)の炭酸塩35%入りの粉石けんです。
結果は、軟水と水道水については、炭酸塩入りの石けんも、純石けんも、ほとんど差はありませんでした。また、意外なことに、硬水(硬度150)については、最適使用量は、炭酸塩入りの石けんの方が、純石けんよりかなり多いという結果です。 炭酸塩は、硬度成分と不溶性の塩を作り、硬水を軟化するという説明が、時々見受けられますが、石けんと硬度成分の方が結合する力が強いため、炭酸塩より先に石けんが石けんカスになってしまいます。 それ以前に、もし、炭酸塩に硬水軟化作用があるのなら、硬度の高い水に炭酸塩を溶かすと、不溶性の炭酸カルシウムが出来て、水は白濁するはずです。実際は、硬水に炭酸塩を溶かしても水は白濁することはありません。 また、炭酸塩はエデト酸塩(EDTA)やゼオライトのように、キレート作用や、イオン交換作用も持たないため、硬水軟化作用は期待できません。 以上の結果から、洗濯に使う水の硬度と、石けん最適使用量をまとめてみました。 (使っている水道水の硬度は、水道局に聞くと教えてもらえます、またこちらでも調べることが出来ます) 純石けんの場合(シャボン玉スノール:標準使用量 35g/30L)
炭酸塩入り粉石けんの場合(35%炭酸塩入り:標準使用量 40g/30L)
■硬度対策2、炭酸塩を追加する 炭酸塩の効果をさらに詳しく調べてみました。 同じ粉石けん(純石けん)に炭酸塩を0%、20%、40%、60%配合して、炭酸塩を加えたことによって、耐硬水性がどの程度向上するか比較してみました。
起泡力試験の結果から、炭酸塩を加えた量が多いほど、全体に泡立ちが悪くなることがわかります。同じ石けんでも、炭酸塩の量によって泡立ちは変わるということです。 また、上で示した硬度と起泡力の関係のグラフと比べると、炭酸塩を加えることで、石けんが泡立つ最低濃度が大きく変化することもないことがわかります。 しかし、グラフの横軸を純石けん濃度で置き換えてみると、確かに同じ泡立ちを得るための、純石けんの量は少なくなります。また、炭酸塩を加えることで、石けんの洗浄力が高まることは「石けんは合成洗剤より良く落ちる」でも示しているので、炭酸塩のアルカリ助剤としての効果は認められます。 総合的に見ると、炭酸塩は、硬水軟化作用はそれほど期待できないが、アルカリ剤として働くことで、石けんカスにならずに生き残った石けんの洗浄力を高めることが出来ると言うことになります。 ただし、グラフからも、炭酸塩は加えれば加えるほどいいわけではなく、20〜40%で最も効果的であることがわかります。 ■硬度対策3、耐硬水性の良い石けんを使う 一般的に、ヤシ油やパーム核油が原料の石けんは、硬水でも泡立ちがよいと言われています。また、逆に、牛脂やパーム油が原料の石けんは石けんカスができやすく、硬水には向かない。また、植物油脂原料の石けんの方が硬度に強いと言われています。 「粉石けんの選び方」で、14種類の石けんについて、耐硬水性能を調べました。石けんによって、硬度による泡立ちは大きく差があることがわかります。その差は、石けんの原料油脂によるもので、炭酸塩の量以上に重要であることがわかります。 硬度の高い水をお使いの方で、耐硬水性の悪い石けんを使うと、泡立てるのに大量の石けんが必要なので、不経済であるとともに、大量の石けんカスが発生し、洗濯もうまくできません。硬度対策には、石けん選びも重要です。
■硬度対策4、炭酸塩で硬水を軟化する 炭酸塩を石けんと一緒に使っても、硬水軟化作用は期待できませんが、あらかじめ風呂の残り湯に炭酸塩を加ておくと、硬度成分が、不溶性の炭酸カルシウムとなって沈殿します。上澄みの水の硬度は大きく下がり、石けんは軟水を使った時のように使いやすくなります。 詳しくは、以下のページをご覧ください 炭酸塩で硬水を軟化する |