Home/

水を汚しているのは


■水質汚濁の原因は

 水を汚しているのは誰でしょう? 工場排水が一番水を汚していると考える人は多いでしょう。確かに一昔前の水質汚濁の原因は工場排水でした。しかし、水質汚濁防止法での規制によって、工場排水はずいぶんきれいになりました。
 大阪府の調査によると、水質汚濁の指標として用いられるBOD(生物化学的酸素要求量)の総排出量のうち、生活排水の占める割合は、1970年には39.4%であったのが、1994年には何と79.2%となっています。すなわち、今では、生活排水が水質汚濁の原因の大部分を占めているということになります。今後は、いくら工場排水の規制を強化しても、水質はそれほど改善が期待できません、水をきれいにするのは私たち一人一人が、どれだけ水を汚さない努力をするかにかかっています。

■生活排水のうちわけ

 それでは、生活排水のうちわけを見ていきましょう。1人1日に、40gのBODを排出していますが、以下のような割合です。
使用水量(リットル) BOD(g) 割合(%)
洗面
洗濯
風呂
雑用
20
40
50
10
 9 22.5
台所 30 18 45.0
トイレ 50 13 32.5
合計 200 40 100
 
 洗面、洗濯、風呂、雑用のBODのかなりの部分は石けんや洗剤によるものです。最もBODの排出量が多い台所では石けん、洗剤より食べ残しの割合の方がずっと多いようです。トイレの排水は仕方ないとしても、まず、台所からの排水対策を考え、次に洗濯排水を考えれば、家庭からの排水の質は大幅に改善し、みんなが少しずつでも実行すれば、水の汚れはずいぶん改善されそうです。
 
■生活排水対策(台所編)

 台所から排出されるBODを少なくするのが最も効果的です。食べ残しをディスポーザーを使って下水に流すなんてとんでもない話というのは言うまでもありませんが、食べ残しを出来るだけ流さないようにする必要はあります。
  1. 食べ残しが出ないように、食事は適量作る
  2. お皿についた汚れを、いきなり洗剤をかけて洗うのもバツ。汚れは、まず、ゴムへら、新聞紙、不要な紙や布でふき取ることで、洗剤使用量を大幅に減らすことが出来ます。
  3. 最近流行のコンパクト洗剤は界面活性剤が40%以上あります。標準使用量は、水1リットルに0.75ミリリットル(小さじ7分の1)、まず、こんな量を正確に計っている人はいないと思います。スポンジに直接付けて使うと、まず使いすぎ、さらにこのような高濃度の洗剤は手あれの原因になります。コンパクト洗剤を使う場合は、あらかじめ別の容器に5〜10倍に薄めて使うと、洗剤使用量も減らすことができ、手にも穏やかになります。
  4. 液体石けんは洗浄力が強くないので、あらかじめ汚れは拭き取らないと、使用量が多くなり、BODを高めます。手あれが大丈夫な人は、アルカリ剤配合の台所用固形石けんを使った方が、洗浄力も強く、経済的です。
  5. 油汚れは重曹でもきれいに落とすことが出来ます。シェーカーに重曹を入れておき、食事が終わった皿にふりかけて、しばらくおいておくと、油は石けんとグリセリンに分解し、たわしでこするだけできれいに落ちます。
  6. 特に油を流すと、桁違いにBODは高くなります。油は絶対に流してはいけません。天ぷら油は、炒め物に使うことで、ほとんど廃油を出さないで使い切れます。廃油は新聞紙などにしみこませて可燃物として出すか、地域で廃油回収をしている場合は回収してください。回収された廃油は石けんとして再生され、排水対策と資源の有効利用という一石二鳥の効果があります。
  7. 和紡布やアクリルたわしを上手に使うと、石けんや洗剤を使わなくても、お湯だけで汚れを落とすことが出来ます。
 
キッチンスクレーパー
ゴムへらです。食器の形に応じて
使いやすい形になっています。

レック(株)製 250円くらい
トイレットペーパーホルダー
円柱型のタッパーウエアの口を丸く切って
トイレットペーパーの芯を抜いて収納。

自作 98円
アクリルたわし
このような布状に編んだものが使いやすい。
軽い汚れなら水だけで十分きれいになる

200円 くらい
 
■生活排水対策(洗濯編)

 最近は、汚れていなくても袖を通したら洗濯するという習慣で、一人当たりの使用水量、洗剤使用量も増加しています。過度の清潔志向は、水の大量使用、洗濯排水の増加による環境への負荷を増大させることを考えてください。資源は有限であり、21世紀はますます、資源の枯渇が現実的になることを考える必要があります。

  1. 洗濯はまとめてする。回数が増えると、水、電機、洗剤とも多く必要です。
  2. 洗濯の前処理(ほこりを落とす、部分洗い、しみ抜き等)をすることで、無駄な洗剤、時間を節約できます。
  3. 石けん、洗剤は適量を量り取って使う。特に、石けんは少なすぎても、多すぎても、石けんカスが発生し、洗浄力低下、残留の問題が出るので、きちんと量ってください。
  4. 汗や土ぼこりなどの軽い汚れは水だけで落ちます。汚れに応じた、適切な洗濯をしてください。
  5. お風呂の残り湯を使うことで、大幅に水を節約できるだけでなく、水道水に比べて水温が高いので、洗浄力もアップします。
  6. 軟水を使うと、石けん使用量を大幅に減少することが出来ます。私の場合、洗濯に使う粉石けんは、標準使用量の4割減らして十分な洗浄力が得られています(30リットルに24gとコンパクト洗剤並)

■水をきれいにするのは私たち一人一人の努力から

 人口の増加、食料や資源の枯渇、そして生活環境の悪化は21世紀に生きる私たちに問われる問題です。
水質汚濁防止法も、工場排水対策だけでは、水質の悪化を防げないとして、前回の改正で、国民の責務を明確化しています。

水質汚濁防止法;第14条の5、第14条の6関係
国民の責務・努力 調理くず、廃食用油等の適正処理、洗剤の適正使用等の水質保全への心がけ、国、地方公共団体の生活排水対策への協力、生活排水処理施設の整備に関する努力
 
 私たちの小さな努力の積み重ねで、生活排水の質を改善できます。節水によって、新しいダム建設に匹敵する水資源を節約できます。生活排水を少し注意するだけで、下水処理場建設に匹敵する水質の改善が可能です。自分たちのまわりの環境改善のため、そして次世代の子供達のためにも、少しずつ努力していきたいと思います。

参考になるHP
  大阪府 生活排水対策マニュアル
  環境庁EICネット