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奇跡の水?日田天領水


■飲むだけで末期ガンが治った!?奇跡の水

 2002.2.28、アンビリバボーで、このような番組が放送されていました。番組の要旨は以下の通り
(1) ストレスや化学物質が原因で体内に大量の活性酸素が発生する。その活性酸素はガンやアトピー、糖尿病など多くの病気の原因。
(2) 日田天領水や電解還元水には、活性水素が含まれていて、これは活性酸素と結合して除去する。
(3) 活性水素を含む水を飲んだ人で末期ガンが治った人がいる。アトピー治療にも使って効果があった。
(4) よって、日田天領水を飲めば、ガンを防ぐことができる、アトピーのも効果がある(かもしれない)。
  
 あ〜、またかぁ〜
「水道水が危ない」というような話とセットで、この手の、浄水器、活水器、奇跡の水の話はよくマスコミに取り上げられます。私も、水質分析や化学物質の安全性の仕事をしている関係から、活性水素の問い合わせを受けたこともあります。
 
 日田天領水というのは、大分県日田市の地下1000mからくみ上げられた深層地下水です。大分県は竹田、久住、耶馬渓など名水が多い県で、日田市も良質の水がでることからサッポロビールも3年前に新九州工場を作ったくらいです。日田天領水も、地下水としては良質で、ミネラルウォーターとして飲むにはおいしい水だと思います。しかし、末期ガンが治る、アトピーに効果があるとマスコミが騒ぎ出すと、とたんに「怪しい水」の雰囲気が漂ってきます。
 
■日田天領水は本当に奇跡の水か?

 日田天領水は、今までもマスコミに取り上げられたことが何度かあります。yahooで検索すると1000件以上ヒットします、しかしその大部分が、日田天領水販売会社.、電解還元水のメーカや販売代理店であり、科学的に取り上げた記事はほとんどありません。それらの、メーカ、マスコミが根拠としているのは、九州大学大学院生物資源環境科学府(旧農学部)遺伝子資源工学の白畑教授の研究です。研究内容の概要はこちらにあります
  http://www.shinsui.com/rnks.shtml
 
 白畑教授の研究は、細胞を使った実験で、電解還元水が活性酸素を抑制する、ガン細胞の増殖を抑制するというものです。確かに基礎研究としては意義のあることですが、試験管の中で行われた実験が、そのまま人に当てはまるとは限りません。

 人に当てはめるには、
(1) 飲む水の中に、十分な量の活性水素が含まれている
(2) 胃から吸収されて、直ちに血中に入る
(3) 体の中を巡る中で、肝臓などで分解されずに、長時間存在する
(4) ガン細胞に到達する時に、十分な濃度の活性水素が残っている
 このような、吸収、分布、代謝、排泄といった臨床試験が必要になります。この研究は「薬物動態」と言われています。

 次に、臨床試験を行います
(5) ガン患者100人を50人ずつ2グループに分けて、1つのグループには日田天領水を、他のグループには普通のミネラルウオーターを飲んでもらい、統計解析を行います。このとき、患者にも、医者にもどちらが日田天領水かは知らされません(二重盲検法)、そうしないと、効くと思いこむことの効果(プラセボ効果)が出るからです。

 このような研究を行い、効果が認められたとき、初めて日田天領水がガンに効くことが科学的に証明されます。
すなわち、現段階は、研究のごくはじめにすぎません。
 
■マスコミに作られた偶像
 
 テレビ番組は、いかにも奇跡の水のような内容を作り上げています。どこがおかしいかを考えてみましょう。

(1) 日田天領水で育てると魚の成長が早い
  魚には飼育に適した水があります。日田天領水は、ウナギに適した水だった・・・というだけです。この結果から奇跡の水とは言えません。ウナギに適した水であることがわかったにすぎません。ウナギに適した水を飲むと、人の健康によいとは言えません。活性水素のパワーを証明したことにはなりません。

(2) 日田天領水を飲むと血液がサラサラになる
  汗をかいた後などは、体の水分が不足して、血液の濃度が高く、いわゆるドロドロになります。そのとき水分を取ると、胃から吸収されて血液はサラサラになります。胃からの吸収速度は人によっても違うので、3人くらいの実験では判断できません。同じ条件で、人を入れ替えて実験しないと何とも言えません。これもまた、水の吸収速度を調べるだけの実験で、活性水素の効果を証明することにはなりません。どうせ実験するなら、血液に直接日田天領水を加えて、サラサラになるかどうか調べればすむのに、なぜやらなかったのでしょうか?
 
(3) 日田天領水には活性水素が含まれているので、鉄がさびない
  深層地下水は酸素のない地下深くからくみ上げられるので、水の中には酸素は溶けていません。イオンも還元状態で存在します。そんな水に鉄をつけてもさびないのは当たり前です。別に日田天領水でなくても、同じような地下水なら鉄はさびません。比較に使った水がどのようなものかはわかりませんが、酸素が溶けていれば当然鉄はさびます。普通の水道水でも、沸騰させて、空気がふれないようにしてさましたら、鉄を入れてもさびません。
 
(4) 日田天領水には活性水素が大量に含まれている
  まず、活性水素そのものの存在が白畑教授の仮説にすぎません。活性水素は学会で認知されたものではなく、それを直接測定する方法も知られていません。原理的にも活性水素と呼ばれている水素原子(ラジカル)が安定に存在するとは考えられず、活性水素そのものが存在するかどうかも不明です。
仮に存在したとして、そのデータを信じたとしても、濃度はppt(1兆の1)からppb(10億分の1)という濃度です。1ppb含まれているとすると、1リットルの水を飲んで、活性水素はわずか0.001mgしか含まれていません。こんな微量で本当に効果があるのでしょうか?活性水素の抗酸化作用が活性酸素を除去すると言われていますが、抗酸化作用はビタミンCやポリフェノールにもあります。ビタミンCはたとえばカプセル1錠に約300mg含まれているので、1錠飲むだけで、日田天領水1リットルに含まれる活性水素の30万倍の抗酸化剤を摂取できます。逆に言えば、ビタミンC1錠に相当するだけの活性水素を取るためには、日田天領水を300トン飲まなければなりません。
 
(5) 日田天領水で末期ガンが治った
  その患者は、ガンの治療に他の方法をいっさい使わず、水だけを飲んでいたのでしょうか?制ガン剤の効果は臨床試験をしないとはっきりしたことは言えません。日田天領水を二重盲検法で試験し、効果が認められた訳ではなく、現段階では「噂」にすぎません。
 
(6) 日田天領水をアトピーの治療に使って効果があった
  その患者には、アトピー用の薬をいっさい使わずに水だけで治したのでしょうか?これもまた、ちゃんとした臨床試験が行われたわけではありません。本当に効果があるなら、きちんとまとめて学会で発表して認知されるはずです。なぜ、きちんとした臨床試験を行わないのでしょうか?
 
 以上のことから、日田天領水が奇跡の水とはどうも考えられません。日田の水は確かにおいしいので、ミネラルウオーターとして利用する程度にして、過大な期待はしないほうがいいようです。
 
 
日田天領水については以下のサイトが参考になります
水にまつわる迷信
マイナスイオンはインチキか
水商売ウォッチング
白畑教授の活性水素仮説

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