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ウールや絹の洗濯


■ウールや絹は石けんで洗えるか?

 ウールや絹などの動物性繊維の製品はアルカリに弱いため、洗濯の教科書や製品の注意書き、クリーニングを扱ったHP等でも、洗濯はドライクリーニングか中性洗剤で行うとされ、アルカリ性の石けんは使うべきでないと言われています。一方、石けんを扱ったHPでは、純石けんを使えばウールや絹も問題なく洗える、それどころかアルカリ剤を使えば洗浄力が高まる、といった説明すら見られます。それでは、ウールや絹は石けんで洗えるのでしょうか?

■ドライ洗剤での実験

 国民生活センターが興味ある実験を行っています(詳しくは、「たしかな目、95年10月号」:図書館で見ることが出来ます)。
 この実験では、カシミヤのセーター、絹のブラウス、ウールの学生服、レーヨンのスカート、麻のスカートを、ドライクリーニング表示が洗える洗剤(ドライ洗剤)やおしゃれ着洗いの中性洗剤、そしてドライクリーニング(低価格店と高価格店)で実際に洗濯し、(1)汚れ落ち、(2)しみ抜き、(3)洗剤の残留、(4)変色、退色、(5)型くずれ、(6)手触り、(7)縮み、(8)値段、を比較しています。

結果を見てみると
  1. 汚染布を使った洗浄力試験では、
       ドライ洗剤 < おしゃれ着洗い << ドライクリーニング 
    の順でした。これは、ドライ洗剤が取扱説明どおり水を使った浸け洗い、おしゃれ着洗いがお湯を使った押し洗い、といった洗濯方法の違いによるものが大きいようです。汚れ落ちはクリーニング店が最もよく、汚れが目立つ場合はドライクリーニングが良いようですが、そもそも、これらの衣料は、あまり汚れないうちに洗うことが多いことと、汗などの水溶性の汚れはドライクリーニングでは落ちにくい事を考えると、洗浄力はそれほど気にすることはないとされています。また、しみ抜きは洗剤原液を付けて、たたき洗いで行いますが、リモネンやグリコールエーテルが配合されたドライ洗剤は効果的でした。
  2. 変色や退色はドライ洗剤、おしゃれ着洗い、ドライクリーニング、いずれも問題なかった。
  3. 型くずれは、いずれの洗剤も少なかった。
  4. カシミヤのセーターと絹のブラウスは、ドライ洗剤やおしゃれ着洗い洗剤を使った洗濯では、手触りがやや硬くなったり、しなやかさがいくぶん無くなったものもあったが、これはクリーニング店に出したときも同様の傾向があったことから、洗剤だけが原因とはいえないようです。
  5. カシミヤ、絹、レーヨン、麻素材の衣料は洗濯後5%前後縮みました。これは、水を使った洗濯をすることで避けられないようです。しかし、乾燥後、アイロンをかけることで実用上問題ないまで戻ったとのことです。

 この実験では、石けんは使っていませんが、ドライ洗剤6種類のうち3種類は弱アルカリ性であり、それらの洗剤の試験結果が中性の洗剤と変わらなかったことから、短時間の洗濯では、石けん程度の弱アルカリ性でも問題はないと考えられます。ウールなどが縮むのは、水を使った洗濯という条件であり、石けんだから縮むということではないようです。しかし、石けん、洗剤いずれを使っても、水洗いで縮む素材はあり、アイロンがけの技術は重要のようです。この実験では、アイロンの2度がけを奨めています。つまり、縮みを伸ばすための、1回目と、ふっくら仕上げるための2回目です。

■プロからのアドバイス

 プロのクリーニング屋さんに、このような衣料を上手に洗うコツを教えてもらいました。
  1. ゴミなどはあらかじめ取っておく、シミは洗剤をつけてたたくなどして落としておく
  2. 洗濯は30℃前後のぬるま湯を使う
  3. 軽く押し洗いが基本、繊維が水で膨潤しているときに揉んだら、絡まって元に戻らない
  4. すすぎの時の水温も洗濯時と同じにする、いきなり水ですすいだら温度差で縮むことがある
  5. 脱水はネットに入れて30秒ほどにする、しわになりやすいものはバスタオルで水分を吸い取る程度にする
  6. 乾燥は形を整えて陰干し、又はバスタオルの上で平干し、冬は洗濯時と温度差があるので室内で乾燥させる
  7. 仕上げのアイロンのかけ方は重要

 石けんでもウールは洗えるとのことです。しかし、重要なのは洗剤の種類ではなくて、前処理方法、洗濯の仕方、仕上げの方法などで、このあたりがプロと素人の違いのようです。やはり、アイロンがけは重要のようで、型くずれしやすい衣類の仕上げは、アイロン台などが必要とのことです。

■結 論

 結論としては、家庭でウールや絹も洗うことができますが、洗濯の注意はきちんと守り、アイロンがけは重要と考えた方がいいようです。また、最近は複合素材やプリント等を多用した、ファッション性を重視した衣類も多く、プロでも洗濯は手こずるようです。自分の洗濯技術を高めると共に、このような難しい衣料を見極め、手に負えないものはプロに任せましょう。

参考になるHP
  奥様上手は洗濯上手
  国民生活センター
  花王ホームクリーニング診断