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フリースライナーの撥水 


■フリースライナーの撥水

 ゴミ問題や赤ちゃんの肌により優しい素材を求める人のあいだで、布おむつを使う人が増えています。布おむつは紙おむつと違って、再使用できるので、ゴミの量は激減します。また、素材もコットンや自然素材を使った物が多く、ちゃんとおむつを交換すれば、赤ちゃんの肌にも優しいはずです。
 
 さて、布おむつの、肌に触れる場所にひく「ライナー」をご存じでしょうか? これは、紙やフリースなどの素材で出来ていて、おしっこはそのまま通して、また、うんちの水分だけ通して、おしりに触れる部分はさらさらのままです。また、おむつ本体が汚れるのを防ぐという役割を果たします。
 フリースライナーはユニクロで有名になった「フリース」でできたライナーです。フリースはポリエステルという繊維を起毛した素材です。防寒着にも使われるように、断熱性が高く、しかも通気性がいい性質を持ちます。ちなみに、ポリエステルは、回収されたペットボトルからも作ることが出来ます。
 ポリエステルは再汚染されやすい素材として知られています。再汚染とは、洗濯の時に落ちた汚れが、洗濯時、あるいはすすぎの時に布に再び付着することをいいます。そのため、ポリエステルは長時間つけ置きしないとか、再汚染防止剤の入った洗剤で洗うなど注意されています。

 フリースライナーはポリエステルで出来ています。おむつ用ライナーなので当然「浸け置き」もします。さらに、石けんで洗う人も多いので、石けんカスの吸着も気になるところです。MLでもフリースライナーの撥水が問題になりました。石けんでフリースライナーを洗ったら、撥水して、おしっこが漏れるということがありました。本当に、フリースを石けんで洗ったら、撥水してしまうのでしょうか? 実験で確かめてみました。
 
■フリースの撥水と水分透過性

 まず、フリースを、純石けんを水道水で溶かした液で5時間浸け置きした後、洗濯しました。純石けんの濃度は0.05%(標準使用量の半分くらいの濃度)です、これは、あえて純石けんを薄い濃度で使って、石けんカスがつきやすい条件を想定しました。
 さて、洗い終わって、乾かしたフリースライナーにスポイドで水を垂らしてみました。実験結果は下に示しました。
 
こちらは洗濯前。水はしみ込みます こちらは純石けんで浸け置き後のフリースライナー。見事に撥水しています。
 
 この実験は、あえて石けんカスが残りやすい条件ですが、純石けんを少なめに使ったり、ちゃんと石けんを溶かさなかったり、水道水の硬度が高いなどの条件でフリースを洗った場合は、この条件と近くなります。石けんカスの残ったフリースライナーはさわった感じもごわごわしています。
 
 それでは、フリースに石けんカスが残らないように洗うにはどうすればいいのでしょうか?
(1) 炭酸塩入りの石けんと軟水で洗う (標準使用量)
(2) 炭酸塩入りの石けんを1.5倍量水道水に溶かして泡立てて使う(いわゆる泡立て洗濯)
(3) (2)の後、クエン酸でリンスする
(4) 合成洗剤(トップ)で洗う (標準使用量)
 いずれも、5時間浸け置きした後、手洗いで洗濯した後、すすぎ、乾燥しました。
 
こちらは実験前のフリースライナー。
どのライナーも水を吸収します。
こちらは、洗濯後のフリースライナー。
左上:石けん+軟水
右上:石けん+水道水
左下:石けん+水道水、その後クエン酸リンス
右下:合成洗剤
 
 結果は上の写真の通りです。(1)の石けん+軟水で洗ったものは問題なく水を吸収します。(2)の泡立て洗濯の物はやや撥水するようになりましたが、それほどひどくありません。(3)のクエン酸リンスのものは(2)と大差ありません。(4)の合成洗剤のものが一番水を吸収しました。
 
 次に、一度石けんカスが吸着し、ひどく撥水するようになったフリースを、上の実験と同じように洗ってみて、撥水しなくなるか(石けんカスが取れるか)を実験してみました。
 
こちらは、あらかじめ純石けんで洗って、石けんカスを付着させたフリースライナー。
どのライナーも水をはじきます。
こちらは、洗濯後のフリースライナー。
左上:石けん+軟水
右上:石けん+水道水
左下:石けん+水道水、その後クエン酸リンス
右下:合成洗剤
 
 (1)の石けん+軟水で洗ったフリースは石けんカスが取れて、水を吸収するようになりました。(2)の泡立て洗濯では石けんカスは取れないで、撥水したままでした。(3)のクエン酸リンスは効果があり、水を吸収するようになりました。(4)の合成洗剤も石けんカスを除去出来ました。
 
 次に、フリースライナーに水が透過するかを実験しました。これは、おしっこがちゃんと吸収されるかを確かめる実験です。
実験は、下の写真のように、カットしたペットボトルの口にフリースライナーをゴム輪で止めて、水100mLを注いで、何秒で流れ出すかを調べました。これで、極端に水が透過する早さが遅くなったら、ライナーとしても吸水性が悪く、おしっこが漏れるということです。
ちょっと写真がわかりにくいかもしれませんが。ペットボトルを切って、
口にフリースライナーをゴム輪で止めています。
 
新しいフリースライナーの場合 
洗い方 水分透過時間(秒)   評価 
試験前 2.10
石けん+軟水 2.06
石けん+水道水(泡立て洗濯) 2.10
石けん+水道水、その後クエン酸リンス 2.15
合成洗剤 1.94
 
撥水してしまったフリースライナーの場合
洗い方 水分透過時間(秒)   評価 
試験前 12.21 ×
石けん+軟水 2.15
石けん+水道水(泡立て洗濯) 11.43 ×
石けん+水道水、その後クエン酸リンス 2.21
合成洗剤 2.30

 新しい(ちゃんと水を通す)フリースライナーの場合は、どの洗い方でも、問題なく水を通しました。
問題の、石けんカスが吸着して撥水してしまったフリースライナーの場合は、試験前の水分透過時間は12.21秒と、明らかに遅く、おしっこが漏れるかもしれません。軟水+石けんで洗ったら、見事に石けんカスは取れて水を吸うようになりました。しかし、泡立て洗濯では、石けんカスを取ることが出来ず撥水したままでした。しかし、クエン酸リンスすることで水を吸うようになりました。
 クエン酸リンスが予想以上に効果がありました。フリース(ポリエステル)は非常に再汚染を受けやすい素材であり、石けんカスを強く吸着します。クエン酸リンスで、吸着した石けんカス(金属石けん)は脂肪酸に変わるので、水に溶けやすくなって、フリースから除去されたと考えられます。このように、フリースのような石けんカスを吸着しやすい素材にはクエン酸リンスがが効果的であることがわかりました。
 
 以上の結果から、フリースライナーの上手な洗い方をまとめてみます。
(1) 浸け置きする場合は、石けんカスの発生しやすい純石けんはさける。炭酸塩入りの石けんを濃度は高めにして、きちんと溶かして使う。
(2) 一度撥水してしまったフリースライナーは、泡立て洗濯では石けんカスを除去できない。クエン酸またはお酢などの酸性のリンスが効果的。
(3) フリースのような再汚染の受けやすい素材は、他の汚れ物と一緒に洗うことをさけた方がよい。他の汚れで再汚染されることがある。
(4) 出来れば石けんは軟水を使う方がいい。上の実験結果からも、石けんカスが出来ないだけでなく、洗浄力が高いので、残留した石けんカスも簡単に除去出来る。

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