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イオン交換樹脂の再生(2) −カンタン!自動再生器−


■イオン交換樹脂の理想的な再生条件
 

 軟水器は再生のやり方で、大きく性能が変わってきます。大型の軟水器でも、再生の方法が悪いと、作れる軟水の量は少なく、再生頻度が高くなります。一方、小型の軟水器でもも、理想的な再生を行えば、大型軟水器以上の性能を引き出すことができます。

 軟水器は、ボイラー、食品製造、クリーニング業、美容院などで広く使われています。それらの軟水器は大型で、再生はタイマーによる自動再生です。自動再生は便利なのですが、装置が大型で高価になり、家庭で使うには無理があります。

業務用軟水器の例

軟水器本体と、食塩を貯めておくタンクが必要で、
ポンプによって決められた量の食塩水を流した後
水洗される


(写真はオルガノの業務用軟水器、HPから引用)

 業務用軟水器は、理想に近い条件で再生が繰り返され、安定して軟水を作ることができます。
イオン交換樹脂の再生は、おおよそ以下のような条件で行われます。

 再生に使う食塩の量    : イオン交換樹脂 1リットルにつき200g
 再生に使う食塩水の濃度 : 約10%
 食塩水を流す早さ      : 軟水器の大きさによって異なるが、計算式がある  

 この条件にはちゃんと意味があります
 (1) イオン交換樹脂1リットルには、硬度成分が、カルシウムとして約40g吸着しているので、それをナトリウムに置き換えるのに必要な食塩が約200gになる。
 (2) 食塩水の濃度が薄すぎると硬度成分とナトリウムがうまく置き換わらない、しかし、濃すぎると、硬度成分が水に溶けにくくなるので、再生の効率は悪くなる。
 (3) 流す早さが早すぎると、硬度成分が溶け出す前に再生が終わってしまう。遅すぎると、再生に時間がかかってしまう。

 この条件を、ポリソフナー(イオン交換樹脂5リットル)にあてはめると、「食塩の量は 1kg、これを10リットルの水に溶かして、30分かけて流す」ということになります。

再生方法1

底を切ったペットボトルを取り付けて、食塩水を流す
再生方法2

10リットルのポリタンクに食塩水を作って流す
イオン交換樹脂再生のイメージ

食塩水の濃さと、流す早さで再生効率は大きく違ってくる
再生時間と食塩濃度

濃度10%の食塩水で30分かけて再生され、その後約20分で水洗され、再生が終了する

 ポリソフナーの再生方法は、
 (1) バケツなどで、食塩1kgを水10リットルに溶かして、再生方法1のようにペットボトルから流し込む
 (2) 10リットルのポリタンクに、食塩1kgを入れ、10リットルの水に溶かして流す
 というやり方を提案しています。

 (1)の方法は、ポリタンクが必要ないので、簡単にできます、また、再生時の水の流れが逆(上昇流再生方式)なので、再生効率も高くなります。しかし、ペットボトルの容量が2リットルなので、10リットル流すためには、5回つぎ足す必要があります。また、再生後の水洗いも、同様に少し手間がかかります。
 (2)の方法は、一度食塩水を作るだけで、後は勝手に10リットル流れるので、手間はかかりません。ただ、10リットルの食塩水を作るのに、ポリタンクを振り混ぜる、高い場所に持ち上げるのが、ちょっと大変です。使わないときのポリタンクの保管場所も必要です。

 再生作業は、使い方にもよりますが、2週間から1ヶ月に一度行う作業で、できるだけ手間をかけずに、簡単に行いたいものです。
そこで、いままでより、ずっと簡単に再生できる方法を考えてみました。


■再生方法による、イオン交換樹脂の再生効率を調べる

 イオン交換樹脂をもっと簡単に再生できないかという声が多く寄せられるので、いろいろな再生方法と、再生効率を調べてみました。
ここでは、ポリソフナー(イオン交換樹脂5リットル)を例で説明します。

(1) 食塩1kgを、容器の中に直接投入し、かき混ぜた後、30分放置し、その後水洗いする。
(2) 食塩1kgを、容器の中に投入し、30分間水道水を流す。
(3) 食塩1kgを、ポリタンクに入れて、10リットルの水に溶かし、30分かけて流した後、水洗い(標準法)。

 それぞれの方法で再生を行った後、イオン交換樹脂を取り出し、それくらい再生されたか(再生効率)を「滴定法」で調べました。滴定法は、イオン交換樹脂の交換容量(再生効率)を正確に調べることができます。

(1) 食塩を直接容器に投入し、かき混ぜた後30分放置。
一番簡単な方法です。
(2) 食塩を容器に投入し、水を流すことで食塩を溶かして再生する方法です。この方法はマルチソフナーの簡易再生方法として公開しています。 (3) ポリソフナーの標準再生方法で、業務用軟水器の再生条件に近い方法です。

 再生方法1:食塩を容器に投入後30分間放置ご水洗 (オレンジ)
 再生方法2:食塩を容器に投入、水道水を流しながら再生
(黄色)
 再生方法3:10%食塩水10リットルを流す
(薄青)
 再生方法4:3を2回繰り返し
(濃青)


(1) 食塩を容器に投入、30分放置後水洗する方法 再生効率 54%
  この方法は、容器の中に食塩を投入し、30分放置するだけなので、一番簡単な方法です。しかし、再生効率は54%に留まりました。
 この方法の欠点は、まず、食塩が効率的に利用されない点です。ポリソフナー内部にはイオン交換樹脂の隙間に水が約1リットル入っています。ここに食塩1kgを投入してかき混ぜるのですが、食塩の溶解度は約36%です。水1リットルには360gしか溶けないので、残りの640gは溶け残ります。溶け残った食塩は、再生には使われないので、水洗いの時に無駄に捨てられるだけです。また、この方法は、かき混ぜた後静置しているだけなので、イオン交換樹脂のごく表面部分しか再生されません。イオン交換樹脂は多孔質(表面に穴が無数にあいている)の構造で、表面積が大きいので多くの硬度成分を吸着することができます。イオン交換樹脂の内部まで再生するには、食塩水が流れていなければなりません。新しい食塩水をイオン交換樹脂の中を一定流量で流すのが、再生効率を上げるのには必須です。

(2) 食塩を容器に投入、水道水を流しながら再生 再生効率 50%
 容器に食塩を投入し、水道水を流すことで食塩水を作り、イオン交換樹脂を再生する。一見、簡単で、画期的な再生方法のように考えられますが、予想に反して、再生効率はもっとも悪く、わずか50%でした。
 この方法には致命的な欠点があります、それは食塩水の濃度をコントロールできないことです。再生に用いる食塩水濃度は10%前後がもっとも効率がよいとされています。しかし、この方法では、流す水の量が少ないこともあって、食塩水の濃度は約36%(飽和食塩水)になります。飽和食塩水とは、もうこれ以上溶かすことができない最高濃度の食塩水で、このような高濃度の食塩水を使った場合、再生して溶け出すはずの硬度成分が、飽和食塩水には溶けにくいため再生効率は悪くなります。また、再生は、30分くらいかけて行うのがもっとも効率がよいのですが、この方法では、あっという間に食塩が溶けて、短時間で流れてしまうので、やはり再生効率は低下します。
 マルチソフナーの簡易再生方法として公開したのですが、やはり再生効率が悪く、あまり普及しませんでした。いくら、簡単な再生方法とは言っても、再生頻度が倍になるようなら、トータルでの手間は変わらないどころか、むしろ時間と食塩は余計にかかってしまいます。

赤が、食塩を投入して、水道水を流しながら再生したときの、イオン交換樹脂を流れる食塩水濃度。短時間で濃い食塩水が流れてしまい、再生効率が悪い。
青は、ポリタンクを用いて10%の食塩水を流した場合。

(3) 10%食塩水をポリタンクに作って流す方法 再生効率 90%、95%
 業務用軟水器の再生方法に近い方法で再生する方法ですが、やはり再生効率は高く、1回の再生で90%、2回の再生で95%でした。この結果から、再生は通常1回で十分だと考えられます。一番手間はかかりますが、確実に再生できる方法です。


■カンタン!自動再生器の作成

 やはり、再生を手抜きで行うと、再生効率が悪く、何度も再生を繰り返す必要があることがわかりました。それでは、再生効率を落とさずに、簡単に再生できる方法はないのでしょうか?

 家庭用軟水器の最大手である三浦工業は、再生には市販の食塩を使わずに、食塩を小石状に固めた専用リフレッシャーを使うことで、食塩水濃度を調整しています。しかし、このリフレッシャーは、単独では市販されておらず、価格も高価です。

 市販の安価な食塩を使って、イオン交換樹脂の再生に理想的な、濃度10%の食塩水を安定して作ることができないかと考え、このような自動再生器を作ってみました。

小型の耐圧容器を使って作りました。
入口はポリソフナーと同じワンタッチコネクターが、出口はニップルがついているので、ポリソフナーのホースをワンタッチで接続できます。
使い方は簡単です、蓋を開けて市販の食塩1kgを中に入れます。
ポリソフナーが接続されている蛇口からホースを外し、代わりに再生器のホースを接続します。ポリソフナーのホースを再生器に接続し、水を流すだけです。 カプセルソフナーと同じ構造なので、再生器として使わないときは、軟水カートリッジを付ければ、軟水器としても使えます。活性炭カートリッジをつければ塩素除去シャワーとしても使えます。

 簡単な装置ですが、特別な工夫がしてあります。単に、このような容器に食塩を入れて流すだけなら簡単ですが、上でも述べたように、出てくる食塩水の濃度は約36%(飽和食塩水)になり、あっという間に食塩は溶けてなくなり、再生効率も悪くなります。
 この再生器は、自動的に食塩水の濃度が、再生に理想的な濃度である約10%になるような工夫がしています(特許出願中)。
そのため、食塩を入れて、水を流すだけで、自動的に、食塩水が調整され再生されます。中の食塩がなくなった後、しばらく水を流しておくと、自動的に洗浄されて再生が完了します。

 この、再生器を使うことで、面倒だった再生作業の手間が激減し、かつ、理想に近い状態で効率よく再生することができます。
この再生器は、ポリソフナー、マルチソフナー、カプセルソフナーはもちろんのこと、ほとんどの手動再生式の軟水器にも使うことができます。


カンタン!自動再生器は、カドリーサボン様から購入できます。