Home/

水道水中の放射性物質を除去する


■福島原子力発電所事故による放射性物質

 2011年3月11日に起こった東日本大震災によって、福島第一原子力発電所が大きなダメージを受け、水素爆発やベント(原子炉内の水蒸気を放出する)によって放射性物質が環境中に放出されたことから、首都圏でも水道水から飲食物摂取制限に関する指標値を超える放射性物質が検出され、大きな社会問題となりました。
 ミネラルウォーター類が店頭から姿を消し、乳幼児をもつ家庭や保育所などでは心配な日が続いています。

  水道水から放射性物質を除去できないのでしょうか?

 今回は、その原理と可能性について考えてみます。


■水道水から検出される放射性物質とは

 水道水から検出された放射性物質の情報は、厚生労働省(水道水に関する情報)に掲載されています。
この資料によると、検出された放射性物質は主に、セシウム134、セシウム137、ヨウ素131、ヨウ素132であり、ヨウ素131が比較的多く検出されています。
 これらの物質は原子力発電所から環境に放出され、風に乗って広範に拡散し、雨とともに河川に流入したものと考えられます。

 それでは、これらの放射性物質はどのように発生し、どのような形で水道水に入っているのでしょうか?

放射性セシウム(セシウム134、セシウム137) 

 セシウム(Cs)は、ナトリウムやカリウムなどと同じアルカリ金属です。原子炉内でセシウムは、金属として存在していますが、水との反応性が非常に強く、空気中に放出されると、水蒸気と反応して、水酸化セシウムに変わります。

 2Cs + 2H2O → 2CsOH + H2

さらに、水酸化セシウムは、空気中の炭酸ガスと反応して、炭酸セシウムに変わります。

 2CsOH + CO2 → Cs2CO3 + H2O

この炭酸セシウムが、雨とともに河川に流れ込み、水道水から検出されます。このとき検出されるのは、セシウムイオン(Cs+) です。

放射性ヨウ素(ヨウ素131、ヨウ素132)

 ヨウ素(I)は、塩素や臭素などと同じハロゲン元素です。原子炉から放出されたヨウ素は、ヨウ素ガス(I2)の形で存在します。ヨウ素は塩素ほど反応性は高くないので、大部分はヨウ素ガスの形として存在しますが、一部はヨウ素イオンの形になります。
 水道水から検出されるのは ヨウ素ガスが水によけた ヨウ素(I2)  ヨウ素イオン(I-) です。 


■水道水から放射性物質を除去する

 水道水中に含まれる放射性物質は、セシウムイオン(Cs+) 、ヨウ素(I2) 、そして ヨウ素イオン(I-)です。これらの放射性物質は、それぞれ化学的性質が異なりますので、除去する方法が違います。
 放射性物質の化学的性質は、通常の(放射性でない)物質とほとんど変わりません。つまり、水処理方法で、通常のセシウムやヨウ素を除去する方法を用いれば、放射性物質も除去できると考えられます。


セシウムイオン(Cs+)の除去

 セシウムイオン(Cs+)は、活性炭では除去できません。セシウムイオンは陽イオンなので、陽イオン交換樹脂で除去できます。陽イオン交換樹脂は、軟水器に用いられているものなので、軟水にはセシウムイオンは存在しません。

ヨウ素(I2)の除去

 ヨウ素(I2)は、活性炭の性能試験でも用いられるほど活性炭に吸着されやすい物質です。放射性ヨウ素も活性炭に吸着されると考えられます。厚生労働省からの文書にも放射性ヨウ素の除去に活性炭が有効であることを示すとされています。
 家庭用浄水器にも活性炭が使われているので、放射性ヨウ素は除去できると考えられますが、浄水器メーカーは、消費者からの質問に対して、はっきり除去できるとは答えていません。これは、浄水器メーカが、放射性ヨウ素の除去テストを実施していないため「除去」できるとは答えられないためです。現実的には、家庭用浄水器でも大部分の放射性ヨウ素を除去できると考えられます。

ヨウ素イオン(I-)の除去

 ヨウ素イオン(I-)は、陰イオンなので、活性炭では除去できないと考えられます。ヨウ素イオンは、陰イオン交換樹脂で除去することができます。

まとめると
 

 セシウムイオン(Cs+)

 ヨウ素イオン(I-)

ヨウ素(I2) 

 陽イオン交換樹脂

×

×

 陰イオン交換樹脂

×

×

 活性炭

×


 以上の原理から、水道水から放射性物質を除去する浄水器は、(1) 陽イオン交換樹脂、(2) 陰イオン交換樹脂、(3) 活性炭を組み合わせたもので、以下のような形のものになります。

 

  •  


■放射性物質除去を想定した浄水器の作成


 水道水中から放射性物質を除去する浄水器の原理はわかったのですが、実際にはこのような原理の浄水器は市販されていません。私も、関東に小さな子供がいるので、安心のために、この原理の浄水器を作成してみました。

 活性炭がこの浄水器の性能を決定しますが、食品用ヤシ殻活性炭を500g使っています。この量は、市販の蛇口用浄水器の10倍、シーガルフォーのような据え置き型浄水器と同等で、約10000リットルの水を処理できます(1日20リットル使っても1年以上使えます)。
 ケースは、工業用精製水製造装置の部品を使っています。これは、超純水や食品製造などに広く使われている部品で、耐久性、信頼性は問題ありません。
 イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂を充填しています。セシウム、ヨウ素イオンだけでなく、水道水中の鉄、銅、鉛、水銀なども除去することができます。また、イオン交換樹脂は、食塩水を流すことで再生できます。
 実際に放射性物質の除去テストはしていませんが、原理的には除去できると考えられます。

     カプセルソフナーUと同じ構造で、カートリッジに、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、活性炭を積層充填しています。

 普通のホースが接続できる蛇口や洗濯機用蛇口に接続できます。

 泡沫蛇口への接続例

 このような分岐パーツが市販されています
 (ホームセンターなどで入手可)

 簡単に原水、浄水を切り替えることができます

 食器洗い乾燥機用の分岐パーツも使うことができます



   

 放射性物質除去を目的とした浄水器

 ■浄水器本体
 ■陽陰イオン交換樹脂、活性炭カートリッジ
  10000リットル処理できます(1年以上)
 ■接続用ホース
  接続部分は汎用のパーツを用いていますので、カプセルソフナーと
  同様、様々な蛇口に接続できます。
  参考:→カプセルソフナーU