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エコナに発がん物質?


■エコナって?

 2009年9月、花王のエコナ製品群に分解して発がん物質に変わるかもしれない物質が含まれていることで、出荷を停止しました。この内容について少し詳しく解説してみます。

 エコナは体脂肪がつきにくい油として厚生労働省から特定保健用食品(トクホ)として認められています。その仕組みは次のようなものです。

 普通の動植物性油脂は、1つのグリセリンに3つの脂肪酸が結合したものです。「3つ」は「トリ」とよばれるので、脂肪は化学的には「トリグリセリド」と呼ばれています。


      
           
グリセリン 脂肪酸 トリグリセリド(脂肪)

 食事などで摂られた脂肪は、リパーゼの働きで、グリセリン、脂肪酸、そして2-モノグリセリドに消化され、吸収されます。「モノ」は「1つ」を示す言葉です。

              
トリグリセリド(脂肪) リパーゼ グリセリン 脂肪酸 2-モノグリセリド

 吸収された2-モノグリセリドと脂肪酸は、体の中で再度トリグリセリド(脂肪)に合成され、体脂肪として蓄えられます。

              
2-モノグリセリド 脂肪酸 トリグリセリド(脂肪)



 エコナはジアシルグリセリドが主成分の油です。「ジ」とは「2つ」を示す言葉です。つまり、1つのグリセリンと2つの脂肪酸から合成された油です。

   
ジアシルグリセリド(エコナ)

エコナはリパーゼの働きで、グリセリンと脂肪酸に分解されます。このとき、脂肪の合成に必要な2-モノグリセリドができないので、吸収されても体の中で脂肪が合成されません。この仕組みでエコナを摂取しても脂肪が付きにくいのです。

           
ジアシルグリセリド(エコナ) リパーゼ グリセリン 脂肪酸



■エコナの安全性

 エコナの安全性でまず問題になったのは、このジアシルグリセリドの安全性でした。普通の油にもジアシルグリセリドは含まれますが、エコナには高濃度に含まれます。
 食品安全委員会は2005年からジアシルグリセリドの安全性(発がん促進性)を調べています。さらに2009年、エコナには不純物として発がん物質であるグリシドールに似た成分が含まれることがわかりました。エコナに含まれているのは、脱臭工程で精製するグリシドール脂肪酸エステルという物質で、普通の油の数十倍以上含まれています。

       
グリシドール(発がん物質)   グリシドール脂肪酸エステル(エコナに含まれている)

 グリシドールはグリセリンに似た物質で、国際がん研究機関(IARC)で「ヒトに対して発がんの危険性あり」(2A群)と分類されています。エコナに高濃度に含まれるグリシドール脂肪酸エステルは、グリシドールに脂肪酸が1個結合したものです。この物質は、アルカリ性の条件でグリシドールと脂肪酸に分解されます。上で述べたように、リパーゼで分解されることも十分考えられます。
 グリシドール脂肪酸エステルが体の中でどのように消化、吸収、代謝されるかよくわかっていません。現在、食品安全委員会で審議中ですが、どのような結論になるか待たれるところです。
 花王は、エコナは安全であると主張していますが、製品の出荷を停止しました。また、エコナからグリシドール脂肪酸エステル含有量を少なくした製品の開発をはじめています。


■この問題をどう考えるか

 エコナの安全性が評価されるのにはもう少し時間がかかりそうです。エコナは体脂肪が気になる人、ダイエットを実行している人にとって魅力的な製品で、一度使い始めると継続的に使い続ける製品です。それだけに、安全性については十分に検討する必要があります。

(1) 日常的に食する食品で、発がん性のおそれがあるものは避ける方が無難
(2) エコナのような合成油は、天然の動植物性油脂とは異なるものと考えるべき。天然成分と異なるものは、何らかの毒性がある可能性を否定できない
(3) トランス脂肪酸も同じように合成された油で、やはり心疾患のような問題がある
(4) 体脂肪を気にする人は、まず脂肪そのものの摂取量を減らす努力をするのが基本。エコナなどに逃げてはいけない。
(5) トクホを過信してはいけない。栄養バランスの取れた食生活を考えるのが基本

 私個人としては、エコナのような合成油は気持ち悪くて使ったことがありません。


参考
食品安全委員会 http://www.fsc.go.jp/sonota/diacylglycerol_dag_qa_20090924.pdf