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酸やアルカリを使った洗浄 (1) セスキスプレー


■酸やアルカリを使った洗浄

 市販されている洗剤には、酸性やアルカリ性の助剤が使われているものがあります。
 酸性の助剤は、トイレ用の洗剤に多く使われています。これは、便器に付着する尿酸カルシウムなどの、水に溶けにくい塩(えん)を溶かすためです。電気ポットの底に付着する、白いスケールの成分は、主に炭酸カルシウムですが、それを落とすには、クエン酸がよく使われます。
 また、アルカリ助剤は、特に油汚れの厳しい汚れを落とす洗剤に多く使われています。粉石鹸の洗浄力を高める炭酸ソーダ(炭酸塩)は有名です。食器洗い用石けんには、炭酸塩よりアルカリの強いケイ酸ソーダが使われることもあります。換気扇や浴室のカビ落し用の洗剤には、水酸化ナトリウムという、強アルカリの助剤が使われています。

 このように見ていくと、酸は、炭酸カルシウム、尿酸カルシウムなどの、無機塩を溶かすために使われ、アルカリは油やタンパク質などの有機物の汚れに使われるようです。

 酸やアルカリは、石けんや洗剤の洗浄力を高める助剤として使われることが多いですが、使い方次第では、洗剤を使わないでも、酸やアルカリだけで落とせる汚れもあります。酸やアルカリをうまく使えれば、石けんや洗剤の使用量を減らし、有機物による環境負荷を少なくできます。
 それでは、酸やアルカリの上手な使い方を考えてみましょう。

■セスキスプレー

 アルカリ助剤は多くありますが、アルカリの弱い順にならべると、以下のようになります。

  弱い← 重曹 < セスキ炭酸ソーダ < 炭酸ソーダ < ケイ酸ソーダ < 水酸化ナトリウム →強い

 セスキ炭酸ソーダ(セスキ)は、重曹(炭酸水素ナトリウム)と炭酸ソーダの複塩で、それらの中間のアルカリの強さです。炭酸塩ほどのアルカリでは手荒れが心配、重曹ではアルカリが弱くて効果が物足りない、との考えから、適当なアルカリ助剤として、最近、使う人が増えているようです。
 今回は、セスキの水溶液をスプレーにして、どれくらい掃除に効果があるか実験してみました。
 実験に使ったのは、(1) 水、(2) セスキ(5%)、(3) 石けん(3%) です。

左 :水
中 :セスキ (5%)
右 :石けん (3%)

汚れとして、
  (1) 米びつの壁(スチールに塗装している。油とほこりの汚れが付着)
  (2) 米びつのふた(プラスチック製。レンジからの油を中心とした汚れが付着)
  (3) レンジの壁(油汚れ、特にステンレス板には油がこびりついている)
  (4) ステンレス製やかん(油汚れがこびりついている)
を用いました

汚れ(1) 米びつの壁面
汚れ(2) 米びつのふた
汚れ(3) レンジの壁 汚れ(4) ヤカン

 汚れ落ちの評価は以下のように行いました。
それぞれの汚れに、水、セスキ、石けんをスプレーした後、同じ大きさのガーゼでこすって汚れを拭き取ります。ガーゼを並べて、汚れの落ち具合を比較しました。この方法は、「スミア法」という方法で、放射線などの汚染調査に使われています。また、それぞれの汚れも、洗浄後、どれくらい汚れが落ちたかを評価しました。

1.米びつの壁
 水では、ほとんど汚れは落ちていませんが、セスキと石けんは、ほとんど汚れが落ちました。セスキの汚れ落ちは石けんとほとんど変わりません。このような、比較的軽い汚れには、セスキは効果的であることがわかりました。また、セスキは、石けんより扱いやすいのもポイントです。



2.米びつのふた
 水でもある程度は落ちましたが、油部分は落ちませんでした。セスキも意外に汚れ落ちはよく、油も落ちています。ただ、ざらざらした窪み部分は、石けんよりは汚れ落ちは悪い結果でした。石けんは、一番よく落ちました。



3.レンジの壁
 水ではほとんど落ちません。セスキもタイル部分は、ある程度落ちましたが、ステンレスの窪みの部分にこびりついた油は落ちませんでした。石けんは、こびりついた油もよく落ちました。このような、こびりついた油は、セスキのようなアルカリ助剤だけでは難しいようです。油は水をはじくので、セスキが効果があるのは表面だけです。やはり、石けんのような界面活性剤の浸透作用で、油の中まで入り込まないと汚れは落ちません。



4.ステンレス製やかん
 水ではまったく落ちません。セスキもほとんど効果がありません。石けんは、比較的軽い汚れは落ちましたが、焼き付いた汚れは落ちませんでした。さすがに、これくらい厳しい油汚れには、セスキは無力です。
 ちなみに、このようなこびりついた油汚れは、メラミンフォームが効果的で、水だけできれいに落ちます。



■セスキスプレーの上手な使い方

セスキスプレーも、汚れの種類によっては、ある程度の効果がある事がわかりました。結果をまとめると、
  1. 米びつの壁、ふた、炊飯器、電子レンジ、テーブル、レンジのタイルなどの比較的軽い汚れに対しては、水よりも効果的に汚れを落とすことができる。
  2. ただし、濃度はある程度濃くしないと効果はない。今回は、5%とした。
  3. こびりついた油汚れは、水をはじくためにセスキでは、それほど効果は期待できない。そのような汚れには、石けんの方が適している。
  4. アルカリ助剤として、石けんと一緒に使うと効果的。例えば、油汚れの付いた食器を洗う時に、セスキをスプレーしておくと、食器洗い石けんの洗浄力を高めることができる

■セスキスプレーのレシピ

 今回、用いたセスキスプレー、石けんスプレーのレシピ
セスキスプレー   石けんスプレー 
セスキ炭酸ソーダ 15g
●水         300mL


セスキが入手できない時は
●重曹        7.5g
●炭酸塩      7.5g
●水         300mL

でもよい
●液体石けん  50mL
●炭酸塩      5g
●水       450mL

 セスキは、水に溶かすと重曹と炭酸塩に別れます。つまり、セスキを水に溶かしたものは、重曹と炭酸塩を半分ずつ溶かしたものと全く同じです。
 セスキが入手できない時は、重曹と炭酸塩を同じ量混ぜるたもの使うといいでしょう。混ぜる割合を変えると。アルカリの強さを調整できます。