Home/ |
食品の保存 (2)真空パック
■真空パック器 流通している食品の包装に真空パックはよく使われています。これは酸素を透過しにくい素材の袋で食品を真空パックし、微生物の繁殖を抑える方法です。レトルト食品は代表的な無菌常温保存食品ですが、そのほかにも総菜、ハム・ソーセージ、薫製、干物、生の魚まで真空パックされて売られています。 少し前から気にはなっていたのですが、最近、家庭用真空パック器も1万円を切るくらいまで値段が下がってきたので、購入してその性能をチェックしてみようと思いました。
■専用袋の制約を解決する 使ってみて、確かにメーカの説明どおり簡単に真空パックができます。音も静かで、使い勝手は問題ありません。しかし、この手の製品を使い続けるのに問題になるのはランニングコストの高さです。 この手の製品を使うには専用の袋が必要です。専用の袋は、下の写真のように表の面は透明なつるつるのフィルムですが、裏面は波状になっています。これは、波になっていないと袋の中の空気が抜けないからです。試しに、普通のポリ袋を使ってみましたが、セットした段階で、上の黒いスポンジ部分で押さえられるため、空気が抜けず、空気が入ったままシールされてしまいました。 専用の袋は、1枚50円前後します。普通のお店には売っていないので、通販で取り寄せになることを考えると、ランニングコストは結構かかることになります。
ホームセンターなどで普通に入手できるポリ袋が使えたら、コストは1枚1円程度なので気軽に使えます。そこで、この真空パック器で、普通のポリ袋が使える工夫をしてみました。ポイントは、どうやってポリ袋内部の空気を抜くかという点です。
■真空パックしてみた食品 いろいろな食品を真空パックしてみて、その効果を確かめてみました。
■ポリ袋の酸素透過性 普通のポリ袋が使えるようになって、真空パックも気軽にできるようになりました。しかし、ちょっと気になるのが、ポリ袋の酸素透過性です。ポリエチレンは酸素を通しやすい素材であることは知られています。酸素を通しやすいと、特に肉や魚など腐敗しやすい食品を、常温や冷蔵保存するときに問題が生じます。真空パック専用袋は、空気を通しにくいナイロンとポリエチレンの多層構造になっていています。そこで、専用の袋とポリエチレン袋の保存性能を比較してみました。 下の表は、各素材の酸素透過性を示したもので、ポリエチレンは他の素材に比べて酸素を通しやすいことがわかります。そのため、真空パック専用袋はナイロン+ポリエチレンが用いられています。 この表でポリ塩化ビニリデン(サラン )が最も酸素を通しにくいことがわかります。サランはサランラップやクレラップなどのラップに使われている素材です。ポリエチレンだけでは酸素が通りやすく食品の保存に不安が残りますが、それでは酸素をきわめて通しにくいサラン製のラップで食品を包んだものを、ポリエチレン製の袋で真空パックしたら、専用袋と同じような多層構造になって、保存性が高まるのではないかという期待が高まります。
■生牛肉を使った実験 生牛肉を用いて、真空パックに使う袋の材質で、保存性がどれくらい違うかを実験してみました。 @肉をポリエチレンの袋に入れ、真空パックはせずに解放状態で保存 A肉をポリエチレンの袋に入れて真空パック B肉をサランラップ包み、ポリエチレンの袋に入れて真空パック C肉を真空パック器専用袋に入れて真空パック それぞれを室温(6月:20〜30℃)で保存するという、きびしい条件で実験しました。
結果は見てのとおりです。 @解放状態では、2日後から肉の黒変が見られ、5日後にさらに進み、13日後では腐敗していました。 Aのポリエチレン袋も、解放ほどではないのですが、肉の黒変は認められ、13日後には腐敗していました。やはり、酸素は透過しているようです。 Bのサラン+ポリエチレンは、肉の黒変はほとんどなく、13日後でも赤色を保っていました。 Cの専用袋は、さすがに最も変化が少なく、室温保存13日後でもほとんど変色していません。 ■リンゴを使った実験 リンゴを用いて牛肉と同様に保存性がどれくらい違うかを実験してみました。 @リンゴをポリエチレンの袋に入れ、真空パックはせずに解法状態で保存 Aリンゴをポリエチレンの袋に入れて真空パック Bリンゴをサランラップ包み、ポリエチレンの袋に入れて真空パック Cリンゴを真空パック器専用袋に入れて真空パック それぞれを室温(6月:20〜30℃)で保存するという、きびしい条件で実験しました。
夏に、切ったリンゴを室温で放置するという厳しい条件での結果は、上の写真のとおりです。 @解放のものは、すぐに酸化が進み、リンゴは赤く変色してきました。5日後には黒変し、食べられる状態ではありません。 Aのポリエチレンも、酸素が透過しているようで、解放よりはましですがリンゴの変色は進み、やはり5日後には黒変していました。 Bのサラン+ポリエチレンは、Aに比べて、酸素透過性が低いようで変色は穏やかで、8日後も黒変はしていませんでした。 Cの専用袋は、8日後もほとんど変化はありませんでした。 ■まとめ 今回の工夫で、普通に市販されているポリ袋を使って真空パックができるようになりました。専用袋を使わないですむことから、ランニングコストはずっと安くなり、気軽に真空パックができるようになったことは、消費者にとって大きなメリットと考えられます。 野菜、果実、肉、魚、ソーセージ、総菜など、真空パックによって食品の保存性を高めることができ、食品の無駄をなくし、食品ロスの減少に役立つと考えられます。 ポリ袋は、専用の袋に比べて酸素透過性が高く、肉や魚など鮮度を保つのが難しい素材を保存する場合は、サラン製のラップに包むなどの工夫が必要です。このような場合は専用の袋を使う、野菜や冷凍食品はポリエチレンで十分なので、使い分けると良いでしょう。 |