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ペットソープを作る
■ペットの皮膚トラブルは増えている (一社)ペットフード協会によると、平成24年度の全国の推計飼育頭数は犬・猫合計で、2128万2000頭(犬:1153万4000頭/猫:974万8000頭)ということで、依然ペットブームは続いているようです。住宅事情から、室内飼いのペットが増えており、清潔意識の高まりも相まってペットシャンプーや消臭剤の市場も拡大しているようです。 しかし、本来家の外で飼われることが普通だった犬を室内で飼うと、エアコンによる乾燥、洗いすぎによる皮膚のダメージなどが重なり、皮膚にトラブルを持つ例が増えています。特に、近年は人間と同じように皮膚病、アレルギー、アトピーが増加傾向にあります。 ここで気になるのが、室内で飼っているペットの洗い方です。臭いが気になるので、人間と同じように毎日洗いたくなりますが、ペットって毎日洗っていいのでしょうか?また、ペットシャンプーも多くの種類が売られていますが、どれがいいのかわかりません。 今回は、ペットの生理をもとに、ペットシャンプー(ソープ)の選び方、洗い方を考えてみます。 ■ペットの皮膚 ペット用のシャンプーや石けんを選ぶには、まずペットの皮膚の構造を知る必要があります。イヌの皮膚とヒトの皮膚の違いを調べてみました。 イヌの皮膚はヒトの皮膚よりずっと薄い イヌは冬でも服を着ないで外を駆け回る・・・動物は人間と違って強い皮膚を持っている。こんなイメージをお持ちではないでしょうか? 人間は進化の過程で、体毛が無くなる変わりに、外部からの刺激に負けない強い皮膚を手に入れてきたと考えられます。そのため、ヒトの皮膚な厚さはイヌの3〜5倍もあり、ずっと丈夫にできています。 動物は、披毛が外部からの刺激を防いだり、体温を調整する働きをしていますが、皮膚自体は薄く、デリケートです。 イヌは汗をかかない 汗腺は2種類あります。臭いがあり粘りけのある汗を分泌するアポクリン腺と、無臭で水分の多い汗を分泌するエクリン腺です。汗をかいて、体温を調整するのはエクリン腺ですが、イヌにはエクリン腺は足の裏か鼻にしかなく、そのためイヌは汗で体温を調整できません。ヒトでは脇の下など体の一部にしか分布していないアポクリン腺は、イヌでは全身に分布していて、これがイヌ臭さの原因の一つです。 イヌの皮脂組成はヒトと全く違う イヌの皮膚にはほとんど皮脂が存在しません。ヒトと違って皮脂が皮膚表面を保護しているのではないので、刺激の強いシャンプーで皮膚をゴシゴシ洗ったりすると、皮膚はすぐにダメージを受け、炎症などをおこします。 披毛は皮脂で覆われ、水や汚れを寄せ付けない働きをしていますが、皮脂組成はヒトと全く異なります。ヒトと違って脂肪酸はほとんど無く、コレステロールエステル、ワックスエステル、、コレステロールが主成分です。これらは固くて酸化しにくい油状成分です。 シャンプー後の回復期間はヒトよりずっと長い ヒトの場合、洗顔によって皮脂が失われても、30分から4時間程度で元の状態に戻ります。シャンプー後も、約24時間で回復しますが、イヌの場合は、シャンプーして披毛から失われた皮脂が元の状態に戻るのに72時間以上かかります。ヒトの場合、毎日シャンプーする人もいますが、イヌの場合、シャンプーのしすぎは披毛や皮膚に大きなダメージを与えることになります。
■ペットシャンプーの問題点 ペットブームからペットショップやホームセンターに行くと、ペット用品があふれていて、ペットシャンプーも数多くの種類が並んでいます。いったいどれを選んだらいいのでしょうか? ヒト用のシャンプーは、薬事法で「化粧品」や「医薬部外品」にあたり、成分表示が義務付けられています。しかし、ペット用のシャンプーは規制が無く、成分表示をしないで良いだけでなく、成分自体の規制もありません。ヒトでは配合が規制されているノミ取り用殺虫剤や、保存料、香料なども配合することができます。極端な話では、安い業務用の合成洗剤をボトルに詰めるだけでペット用シャンプーとして販売できます。 もちろん、ペットのことを考えた製品も多くありますが、製品を選ぶときは注意が必要です。 ホームセンターで販売されているペットシャンプーで、成分表示があるもののうち、気になる成分をあげてみます。 安息香酸ナトリウム(保存料)、EDTA-2Na(旧指定成分)、メチルパラベン(保存料) などは、皮膚の弱い犬種には刺激になりそうです。 香料は、イヌのために配合されるのではなく、犬臭さをマスキングするためです。つまり、犬のためではなく人間のために使われます。しかし、イヌの嗅覚はヒトの数万倍、酢酸臭についてはヒトの1億倍と言われています。強い香料は、イヌにとってストレス以外の何者でもありません。 ■ヒト用のシャンプーで洗っていい? ヒト用シャンプーは、ペット用より脱脂力が強いものが多く、ペットに使うと油を取りすぎます。また、香料、保存料、シリコン、色素など多くの添加剤が使われていますが、ペットのデリケートな皮膚には刺激になるものも多いので、ヒト用シャンプーでペットを洗わない方がいいでしょう。 ■ペット用手作り石けんの問題点 ペット用の手作り石けんも、ネット上で多くのものが販売されています。ペット用手作り石けん教室まで開かれています。 確かに、手作り石けんがヒトにいいのはわかっています。ハーブやクレイを配合した優れた石けんも多くあります。しかし、ヒトのために作られた手作り石けんは、ペットにもいいのでしょうか?ペット用手作り石けんを扱っているサイトでも、イヌの生理や皮膚の性質を述べているところは少なく、ヒトにいい石けんはイヌにもいいという安易な考えで作られたものが多くあります。その一例をあげると クレイや炭を使っている スクラブ効果のあるクレイや炭は、ヒトの丈夫な肌には効果がありますが、イヌのようなデリケートな肌には絶対使ってはいけないものです。クレイでゴシゴシすると、イヌの肌はすぐに傷つきます。また、クレイの粉末は披毛に残り、粉塵として吸い込んだり、なめたりするのでイヌの健康に良いとは考えられません。 エッセンシャルオイルを使っている アロマテラピーはヒトに使われることは多いのですが、動物への効果はほとんど知られていません。それどころか、ヒトでは解毒できる精油が、動物では解毒されずに毒物として働くものさえあります。このようなことを理解して使われているのでしょうか? また、先にも述べましたが、イヌの嗅覚はヒトの1万倍、エッセンシャルオイルの臭いが体に付くことはイヌにとってストレスになります。イヌ臭いからエッセンシャルオイルで臭いを付けるという安易な考えで配合するものではありません。 植物油は高級? 植物油100%だと高級、スイートアーモンドオイルやアボガド油などの高価な油脂を使えばいい石けんができるという思いこみで、イヌ用石けんもヒトと同じような配合で作られることが多いのですが、イヌの皮脂はヒトと全く違います。イヌ用の石けんは、イヌの皮脂とその分泌量、分布について考えなければいいものを作ることができません。 ディスカウントの割合が大きい 乾燥肌のわんちゃん用石けんなど、よくわからない説明の石けんも販売されていますが、イヌの乾燥肌ってどのように定義されているのでしょうか? 保湿力の高い石けんは。ディスカウントの割合を15〜25%と多くとることがありますが、このような石けんはイヌには適していません。特に、不飽和脂肪酸を多く含む植物性油脂を使った場合、イヌの披毛に油脂が大量に残留し、酸化して悪臭を発したり、微生物が繁殖し皮膚へダメージを与えるおそれさえあります。 ■ペットソープを作る 今回ペットソープを作るにあたって、イヌの生理を考慮して次のような考えで設計しました 1.残留した油脂が酸化して悪臭を放たないように、不飽和脂肪酸の割合を下げる 2.イヌの皮膚を傷付けるクレイや炭などのスクラブ成分は配合しない 3.イヌの嗅覚をかく乱させるエッセンシャルオイルは配合しない 4.動物の体脂肪組成に近い油脂としてラードを用いることで、生体に違和感のない石けん組成とした 5.ディスカウントは可能な限り小さく、不飽和脂肪酸を含む油脂の残留を少なくした 6.オーバーファット成分として、イヌの披毛に含まれるワックスエステルを加えることで、洗った後にも披毛に必要な油を残すようにした 7.泡立ちが高めで、皮膚に刺激が少なく、披毛を泡で洗うことができるようにした 8.披毛に残った油の微生物による分解、悪臭の発生を防ぐために、天然の抗菌剤であるティーツリーオイルを配合。ティーツリーオイルは、手術後の殺菌剤として動物病院でも使用実績があります。 今回作ったペットソープの脂肪酸組成と性質は以下の通りです。 この石けんを作るにあたり、動物病院、ペットサロン、薬剤師の方と協力し、実際にペットを飼っておられる方十数人にモニターしてもらい、それらの意見を取り入れました。 ■イヌの洗い方 1.洗いすぎない 洗う間隔は2週間から1ヶ月に1回程度。皮脂の分泌の少ないイヌは洗いすぎには注意が必要です 2.ブラッシングは定期的に行う 微生物の餌になるため、ふけ、抜け毛、埃は落とす 3.お湯で軽くすすぐ(お湯の温度は低め) 4.良く泡立てたペットソープで、披毛を手櫛するようにやさしく洗う。皮膚表面をゴシゴシしてはいけない。 5.シャワーで素早く石けんを洗い流す 6.タオルを押さえ付けるようにして水をとる。水に濡れた披毛をごしごしこすると痛むので注意。 7.低温ドライヤーで乾かす(短時間で) 今回作ったペットソープは、カドリーサボン様から購入できます。 現在、無料モニターをされていますので、関心ある方はご利用されてはいかがでしょうか カドリーサボン |