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手作り石けんと軟水の出会い



■手作り石けんと軟水の出会い

●石けんカスの問題
 石けんは、水中のカルシウムやマグネシウムと結合して石けんカス(金属石けん)になります。お風呂で、石けんのついたタオルを洗面器ですすいだときに白い垢状のものが浮いてくることがありますが、あれが石けんカスです。石けんカスは洗面器や浴槽などのプラスチックに付着しやすく、こびりついたら落とすのに苦労します。実は、石けんで体を洗ったり、洗顔、洗髪したりするときも、これと同じことがおこっているのです。石けんを洗い流すときに石けんカスができて、それが肌や髪の毛に付着し、肌についた石けんカスは、肌の表面に薄い膜を作ります。石けん洗顔後、顔がつっぱるのは、保湿力のない石けんカスの膜のせいなのです。髪の毛がぱさぱさになるのも、やはり石けんカスが原因です。
 肌に優しいはずの石けんも、石けんカスができるという欠点で、その魅力は半減してしまいます。洗顔後、肌がつっぱるので、どうしても化粧水、クリームなどの保湿剤に頼ってしまいます。特に、乾燥肌やアトピーなどの肌にトラブルを持つ人は、洗顔後、肌に石けんや洗浄剤が残留しない方がいいのですが、石けんカスが残ると、放置しているうちに加水分解され、アルカリ性になるので肌を刺激してしまいます。

●日本は軟水の国?
 水に含まれるカルシウムやマグネシウムの量のことを硬度といいます。世界保健機構(WHO)は、硬度が60以下の水を「軟水」、60〜120の水を「中程度の軟水」、120以上の水を「硬水」とよんでいます。日本の水道水の平均硬度は50〜60で、外国と比べるときわめて軟水ですが、地域によって硬度はずいぶん違います。北海道、秋田、宮城、新潟、愛知などは硬度が低く、東京、神奈川、千葉、埼玉、福岡、沖縄などは比較的硬度が高い地域です。
「日本は軟水の国だから石けんは問題なく使える、軟水器など必要ない」と言われる方もいます。しかし、それでは、なぜ石けん生活を始めた人の多くが石けんカスに悩まされるのでしょうか?洗顔や石けんシャンプーの仕上がりに満足出来ず、石けんジプシーのように次々と石けんを探す必要があるのでしょうか?

●手作り石けんが市販の石けんより仕上がりがよい理由
 手作り石けんが、市販の石けんより使い心地がよい理由は。@いい原料を使っている、A原料油脂に含まれるグリセリンが残っている、B過脂肪石けんなので油脂が残っている、C香料や酸化防止剤など余計な添加剤が含まれていない、などが考えられますが、この中で、最も大きな理由は、Bの原料油脂が残っているという点です。グリセリンはすすぎの時に全部流されてしまい、保湿には役に立っていません。
石けんは、濃度が高いときはミセルができて、その中に汚れを取り込む性質があります。手作り石けんに含まれている油脂も洗顔中は石けんのミセルに取り込まれています。すすぎの時、石けんの濃度が下がると、ミセルがこわれて、ミセルの中にあった油脂が水の中に放り出されます。そして皮膚に付着するという仕組みです。市販の石けんが洗顔後、石けんカスしか残らないのに対して、手作り石けんは皮膚に油脂を残すという点で、仕上がり感は大きく異なります。
しかし、手作り石けんといえども、やはり石けんカスはできます。せっかくの良質の油脂で作った手作り石けんも、石けんカスができることで、その実力を十分には発揮出来ません。

●軟水は石けんの力を引き出してくれる
 同じ石けんを使っても、硬度の低い水と高い水では全く使い心地が違います。首都圏に住んでいる人が北海道に旅行したときに、いつもの石けんの泡立ちが違うと感じたことはありませんか。また、温泉が好きな人なら、石けんの泡立ちが良くて、いくら洗い流しても、ぬるぬるする温泉を経験したことがあるでしょう。そんな温泉に入ると、お風呂上がりの肌がすべすべになっていると思います。また、石けんシャンプーの仕上がりは、さらさらでリンスも必要ないくらいです。このような温泉は、たいてい硬度が低い「(アルカリ性)単純温泉」や「ナトリウム炭酸水素塩泉(重曹泉)」です。
水中のカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を除いて、ナトリウムに置き換える装置を軟水器(ソフナー)といいます。軟水器はボイラー用水、クリーニング店、美容院、食品加工、身近なところでは洗濯機、食器洗い機や浄水器などにも使われています。軟水器を使うと、硬度がほぼ0の水(以下、軟水と呼びます)を作ることができます。そして、できた軟水は、先に述べた単純温泉の成分に似ています。
軟水を使うと、石けんカスができないので、石けん本来の性質がきわだってきます。例えば、純石けんなら、いつもよりずっと少ない量で泡立ち、強い洗浄力が発揮されます。手作り石けんなどの過脂肪石けんは、洗浄力が穏やかで、洗ったあとに皮膚に油分を残しますが、軟水を使うと、その性質がはっきり現れます。つまり、軟水は石けんの本来の力をむだなく引き出してくれるのです。