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石けん作りに使う油の性質
■ 石けん作りに使う油の性質 ここでは、石けん作りによく使われる油脂を、その性質が似たもの同士で、下のようないくつかのグループに分けてみました。 ●グループ1 ベースオイルとして使いたい油脂。 ●グループ2 泡立ちが良く、さっぱりとした洗い上がりで、柔らかい石けんになる油脂。 ●グループ3 堅く、溶け崩れの少ない石けんになる油脂。 ●グループ4 泡立ちのよい石けんを作るために必要な油脂。 それぞれの油脂ごとに、脂肪酸組成を表す棒グラフと、その油脂だけを使って石けんを作った場合の、レーダーチャートをつけました。これを見れば、一目で、どんな石けんができるかがわかります。 ●グループ1(ベースオイルとして使いたい油脂) どの油もオレイン酸が主体で、石けんのベースオイルとして最適です。肌への刺激も少なく良質の石けんが作れます。けれども、単独ではやや柔らかくて、溶け崩れやすい石けんになります。 ▼オリーブオイル マルセイユ石けんをはじめ、昔から良質の石けんの原料として使われてきました。今でも、オリーブオイルだけを使い、昔ながらの製法で作った石けんが販売されていて、人気あります。しっとりした仕上がりで、乾燥肌の人や、肌にトラブルがある人には特に適しています。しかし、欠点は、柔らかい石けんになり、浴室に置いておくとすぐに溶け崩れることです。 ▼つばき油 椿は日本固有の植物で、その油は頭髪油として昔から使われていました。オレイン酸含有量がオリーブオイルよりも多く、しかも酸化しにくい良質の油です。オリーブ石けんとよく似た石けんができます。 ▼ひまわり油、紅花油 少し前まで、リノール酸は血中のコレステロールを下げ、健康によいと考えられていたので、リノール酸の多いひまわり油や紅花油は高級サラダ油とされてきました。しかし、その後の研究で、リノール酸の取りすぎは逆効果で、リノール酸とα-リノレン酸やエンコサペンタエン酸(EPA)とのバランスが重要との見解がでたため、リノール酸は人気が無くなってきました。そのため、ひまわり油、紅花油も改良が進み、今、スーパーなどで売られているものはたいていオレイン酸主体のもの(ハイオレイック)となっています。これらの油を使うとオリーブオイルとほとんど同じ性質の石けんを作ることができます。オリーブオイルより精製度が高いため、真っ白な石けんになります。 ▼スイートアーモンドオイル オリーブオイルよりリノール酸が多く含まれ、やや酸化されやすい油ですが、オリーブオイル同様、化粧品用油脂としても使われています。 ▼アボカド油 肌に吸収されやすい植物性ステロール(シトステロール)やビタミンA,E,B群を多く含み、皮膚にとって有用な油です。 ▼マカデミアナッツ油 パルミトレイン酸を多く含むのが特徴です。パルミトレイン酸はヒトの皮脂中に10%以上含まれ、皮膚の再生に重要な役割を果たしていると考えられています。化粧品としてもしわ防止、老化防止の効果が期待されています。ヘーゼルナッツ油もパルミトレイン酸が多く含まれていますが、商品によっては含まれていない物もあるので、よく確かめてください。 ▼ キャノーラ油 新品種の菜種油で、日本では一番消費量の多い油です。安価で手にはいるため、これで石けんが作れればいいのですが、リノール酸やリノレン酸が多く含まれるため、酸化されやすい油です。配合は少なめにして、抗酸化作用のある、コムギ胚芽油やごま油との併用などの工夫が必要です。 ●グループ2(泡立ちが良く、さっぱりとした洗い上がりで、柔らかい石けんになる油脂) リノール酸 リノレン酸などの不飽和脂肪酸が多いため、肌への適性が良く、泡立ち、洗浄力も良好で、泡切れのいいさっぱりした石けんになります。けれども、これらの油脂だけで作った石けんはきわめて柔らかく、溶け崩れやすいうえに酸化されやすいといった欠点を持つので、配合は少なめにした方がいいでしょう。 ▼グレープシード油 さらっとした使用感から、日焼け止めオイルやクリームなどに使われる油ですが、リノール酸を60%以上含んでいるので、柔らかい石けんになります。石けん用油脂として配合する場合は10%程度にとどめた方がいいでしょう。 ▼月見草油 γ-リノレン酸を含み、アレルギー症状に薬効があることで知られています。健康食品としても市販されている油ですが、石けんにした場合、きわめて柔らかく、酸化されやすいものになります。月見草油は石けんにするより、直接肌につける、あるいは食用にした方がよさそうです。 ▼コーン油 リノール酸を50%以上含んでいますが、ビタミンE(トコフェロール)を多く含むため、比較的安定性のいい油です。それでもやはり、石けん用油脂としては10%以内にとどめた方がいいでしょう。 ▼ごま油 オレイン酸とリノール酸が、ほぼ半々の割合で含まれています。セサモールという強力な抗酸化性物質を含むため、安定性はいい油です。化粧品としてもクリームなどに多く使われ、火傷用軟膏に使われることでも有名です。石けんに配合した場合、香ばしいごまのにおいが残ります。 ▼小麦胚芽油 ごま油と同じように、オレイン酸とリノール酸が半々程度含まれています。ビタミンEの含有量が多く、サプリメントのビタミンE製剤の原料にもされます。酸化にも比較的強い油です。 ●グループ3(堅く、溶け崩れの少ない石けんになる油脂) 飽和脂肪酸が多く、堅い石けんになります。安定性も良く、酸化されにくいのですが、多く配合しすぎると、冷水では溶けにくくなり、泡立ちも悪くなります。 ▼みつろう パルミチン酸が主成分で、少し入れるだけで堅い石けんになります。でも、入れすぎると冷水では溶けにくくなり、肌に膜が張ったような洗い上がりになります。 ▼ココアバター、シアバター やはり堅い石けんになります。冬の乾燥時期には、皮膚を保護する膜ができるのでいいようです。 ▼パーム油 パルミチン酸やオレイン酸が主成分で、堅く、溶け崩れの少ない石けんを作るときには欠かせない油です。 ▼豚脂(ラード) 石けんを堅くするパルミチン酸とステアリン酸、泡立ちがよいミリスチン酸、保湿効果のあるオレイン酸とリノール酸を含んだ、単独油脂としてはバランスのよい脂肪酸組成の脂です。ラードはスーパーなどでも入手しやすいので、手軽に石けん作りを楽しめます。 ●グループ4(泡立ちのよい石けんを作るために必要な油脂) ラウリン酸を多く含み、泡立ちがよい石けんになります。しかし、ラウリン酸は肌への刺激が強いので、配合しすぎないよう注意が必要です。 ▼ココナッツ油 石けんの泡立ちを良くするのに欠かせない油です。昔からある浴用石けんは、ココナッツ油が約20%、牛脂が約80%の配合です。ココナッツ油にはラウリン酸が多く含まれるので、あまり多く配合すると、肌を刺激したり、乾燥させたりするので注意が必要です。 ▼パーム核油 パームヤシの種から取れる油で、脂肪酸組成はココナッツ油と似ています。刺激の強いカプリル酸やカプリン酸が少なく、オレイン酸が多いので、ココナッツ油よりマイルドな石けんに仕上がります。 |