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手作り石けんと市販石けんの違い



 手作り石けんを初めて使ったとき、誰でもその洗い上がりの優しさに驚きます。今までの浴用石けんにはなかった、しっとり感、すべすべ感、保湿力などを実感するからです。どうして手作り石けんは、こんなに市販の石けんと使用感が違うのでしょうか?

●原料が違う
市販の浴用石けんの原料は主に牛脂とココナッツ油です。これは、アメリカから工業用牛脂を安く買えることが大きな理由です。牛脂だけでは泡立ちが悪いので、泡立ちをよくするココナッツ油が15〜25%程度配合されています。一方、手作り石けんで使う油は、オリーブオイル、ココナッツ油、パーム油、ゴマ油、米ぬか油、スイートアーモンドオイル、マカデミアナッツ油、アボガド油などの食用油か、つばき油、ホホバオイル、シアバターなど、化粧品に使うような高級油脂です。石けんのできは、使う油の品質によると言われていますので、贅沢な油脂を使って作った手作り石けんが肌に優しいのも理解できます。

●作り方が違う
 油脂(油)は、保湿剤であるグリセリンに3つの脂肪酸が結合してできています。苛性ソーダ(NaOH)を加えてかき混ぜると、油脂は脂肪酸とグリセリンに分かれますが、この脂肪酸(ナトリウム塩)が純石けんと呼ばれるものです。


 さて本題の「石けんの作り方」ですが、工業的に作られる石けんは主として「中和法」と、「けん化法」で作られています。
 中和法は、あらかじめ油脂を脂肪酸とグリセリンに分け、脂肪酸だけをアルカリと反応させて作ります。この方法だと、わずか4時間で石けんを作ることができるため、大量に生産される大メーカーの石けんは、主にこの中和法で作られています。一方、けん化法は、原料油脂とアルカリをけん化釜で焚いて作ります。高温でけん化させた後、食塩を加えて、グリセリンや不純物を除く(塩析する)ことで、純度の高い石けんを作ることができます。けん化法だと石けんができるまで4〜5日かかり、技術も必要なため、今ではこの方法で石けんを作ることは少なくなってきましたが、高品質を売りにしている無添加石けんは、けん化法で作られた物が多いようです。
 手作り石けんは、最も手間のかかる方法で作ります。40度前後の低い温度で、油を傷めないようにしてけん化を行ない、更に1か月かけて熟成するという方法です。この方法は熱を加えないので「コールドプロセス法」ともよばれ、原料油脂の性質を最も生かした石けんになります。また、塩析を行なわないため、油脂の中に含まれていたグリセリンがそっくり石けんの中に閉じこめられています。また、油脂の中に含まれているスクワレン、ステロール、ビタミンA、B、Eなど、肌によいとされる成分も石けんの中に残ったままになります。




●添加物が違う
 市販の化粧石けんには酸化防止剤、金属封鎖剤、着色料、香料などが含まれたものが多くあります。市販の石けんは、作られてから消費者に購入されるまでに時間がかかるので、その間に色が変わったり、酸化して悪臭が発生したりするのを防ぐため、どうしても酸化防止剤などを添加する必要があるのです。なかには、商品価値を高めるために色や香りを付けただけのものもあります。しかし、敏感肌の人などは、これらの添加物にアレルギーを起こすこともあるので、可能なら避けたいものです。手作り石けんは、保存料、色素、香料も無添加で作ることができます。石けんの変質も、酸化しにくい油脂を選んだり、古くなる前に使い切ったりすることで、酸化防止剤を使わなくても管理できます。
 また、自分の肌質にあった素材を混ぜこむことができるのも、手作り石けんならではの楽しみです。保湿力の高い油や蜂蜜、洗浄力を高めるスクラブやクレイ、肌荒れを防ぐハーブ類などを添加して、自分だけのオリジナルソープを作ることができます。

●市販の過脂肪石けんと手作り石けん
 市販の高級化粧石けんの中には、ラノリンや高級油脂成分を加え、洗浄後、皮膚に潤滑膜を残すようにしたものがあります。けれども、手作り石けんは、けん化率を85〜95%におさえて作るのが普通ですから、原料油脂の5〜15%がそのまま石けんのなかに残っています。つまり、この油脂が洗浄後、皮膚に残るので、手作り石けんを使うとあたかもスキンケア用オイルを塗ったような洗い上がりになり、わざわざ高級な油を添加しなくとも、市販の過脂肪石けんと同じような効果をあげることができるわけです。過脂肪石けんや手作り石けんの洗浄力は純石けんに比べてやや劣りますが、その分皮脂を取りすぎないので、肌にはマイルドな石けんといえます。