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発がん物質の海 (2)


 さて、答えはこちらです。
出典は R.Doll,R.Peto,J. National Cancer Institute,66,1192(1981) です
がん死の要因 がん死に対する割合 (%)
たばこ
アルコール
食物
食品添加物
出産や性的な習慣
職業
環境汚染
工業製品
医薬品と医療
地球物理学的な要因
感染症
未知
30
 3
35
<1
 7
 4
 2
<1
 1
 3
10?
 ?
 
 意外な結果だと思いませんでしたか?
がんの要因の1番はごく普通の食物です、次がたばこ。ダイオキシンや食品添加物はごく小さな要因でしかありません。

 一般の人へのアンケート調査ではでは、たばこ、食品添加物、環境汚染、紫外線や放射能などが、がんの原因の上位を占めるという答えが多いようです。そのため、がんを防ぐために浄水器を取り付けたり、高価な無農薬野菜を通信販売でせっせと購入したり、化学物質を必要以上に排除したりする人も少なくありません。
 でも、そんな考えで、多くのお金をかけて、本当にがんを防ぐことが出来るのでしょうか?

 世界保健機関(WHO)の付属組織である国際がん研究機関(IARC)では、発がん物質に関する多くの研究が進められ、その成果はデータベースとして情報公開されています。  IARC Monographs
合成化学物質だけでなく天然化合物についても、発がん性が評価され、その結果を、Group1(ヒトに発がん性あり)、Group2A(たぶんヒトに発がん性あり)、Group2B(人に対して発がん性があるかもしれない)、Group3(人に対する発ガン物質として分類できない)、Group4(たぶんヒトに発がん性無し)、の5グループに分類しています。

 さて、データベースの中から
、Group1、Group2A、すなわち人への発がん性が認められている物にはどのような物があるでしょうか?
ダイオキシン、PCB、アスベスト(耐火材料)、ベンゼン(ガソリンに含まれる)、塩ビモノマー(塩ビの原料)、たばこ、ベンツピレン(排ガス)、アフラトキシン(ピーナツなどのカビ毒)、タール、ニトロソアミン、ホルムアルデヒド(新築の家でシックハウスの原因ともされている)、ディーゼル排ガスなど有名な発がん物質が含まれているのは分かりますが、それらと同じくらいの強さで発がん性がある物として、井戸水などに含まれる砒素、セメントなどに含まれ普通の家でも検出されるラドン、紫外線、レントゲンで使われるX線、ドライクリーニングで使われるトリクロロエチレン、ビールやワインなどのごく普通のアルコール飲料も発がん性があります、また人体にごく普通に存在する女性ホルモンなどの天然ホルモン、ある種の塩漬けの魚、経口避妊薬、ウッドダスト(木を削った粉)、ある種のウイルス、パーマ液やヘアダイ、日焼け用のサンランプも発がん性が認められています。

 水道水に含まれ、発がん物質の代表のように言われているトリハロメタンや残留農薬、食品添加物などは、発がん物質としてはずっとレベルの低い部類になり、そのレベルだとレモンやオレンジに含まれるリモネンや野菜に含まれるフラボノイド、ワラビやフキノトウ、ハンバーグのお焦げにも発がん性があるということになります。
 つまり、私たちは「発がん物質の海」の中に住んでいて、毎日発がん物質と戦いながら生きているのです。

 水道水には発がん物質が含まれるというキャンペーンで高価な浄水器を買っても、会議で、隣の人がタバコを吸っていたら、今までの努力は水の泡です。
 残留農薬の発がん性が怖くて、毎月毎月、宅配で高価な無農薬野菜を買っても、パーマをかけたり、ヘアダイを使ったら、お金と努力はパーです。

 それでは、がんは努力で防ぐことが出来るのでしょうか?
答えはイエスです。正しい知識を身につけ、少しでもがんを防ぐライフスタイルに切り替える事で、がんの60%は防ぐことが出来ると言われています。
そのために、ちょっと常識の非常識を改める必要があります。

1.「合成化学物質は危険、天然物は安全」は非常識。
  天然物にも発がん物質は多く存在する。化学物質を過度に恐れ、天然物を求めたら、かえって危険なこともあります。
2.発がん物質は「発がん性の強さ」だけでなく「摂取量」も考える
  史上最強の発がん物質と言われているダイオキシンも、普通の生活で摂取する量はわずかなので、発がんリスクは100万人に1人ががんになる可能性がある程度。タバコの発がんリスクは10人に1人ががんになる程度なので、タバコの方がダイオキシンより10万倍危険!。
 発がん物質を全て無くすのは不可能なので、発がん性の強さと、摂取量を考慮した発がんリスクを下げるように努力する。
3.偏った情報の鵜呑みは危険
 「発がん物質を無害化する」、「免疫力を高める」、「***でがんが消えた」・・・など、がんに関する情報は氾濫しています。しかし、それらの情報の中には科学的根拠に乏しい物も多く、鵜呑みにして偏った食生活を送ったり、一種類の物を過剰に摂取したりして、かえって健康を害することもあります。専門家の意見を聞く、多くの情報を判断材料にするなどの広い視野を持つことが大切です。
4.リスクと利益の天秤

  パーマをかける利益と発がんリスクを天秤にかけて、自己責任で選択するような必要も生じる。発がんリスクをゼロにすることは不可能なので、自分のライフスタイルからリスクを出来るだけ少なくする努力を心がける。
4.バランス感覚も大切
  神経質にがんの事ばかり考えると、ストレスで免疫力が弱くなり、かえってがんにかかりやすくなるともいわれます。大事なのは様々な要因をバランス良く考える事。

具体的に、がんを防ぐライフスタイルはどのようなものかを、「がん防止12ヶ条」で考えていきます。